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第十一話・初陣ドスモウ部

カーチン先輩の体重(見た目)増量しました。100㎏→120㎏で。

 男には引くに引けない時がある。

 親友を侮辱された時だ(野川原高校相撲部は除く)(あそこは人外魔境なんで)。

 極力“目立ちたくない”とかいいつつ、ラノベ主人公はトラブルに自分から突っ込まなければいられない性分なのだ。

 主人公か?

 まるで主人公だ。

 イっちゃいますか主人公!?


 僕の怒号に、部屋内は不穏な空気が充満しだした。

 練習を続けていたドスモウ部の部員たち(全員ジャニーズ系)は、身を寄せ合っておろおろしている。

 取り巻きの女子たちも、「ちょっとヤバくない?」「止めた方がよくない?」と、ひそひそ話している。

 トーマスは――、


「あ……あはははッ♪ いいんだよタクマロ、気にしないで! す、スンマセンでした先輩! 今日は転入初日で、ちょっと気がたってるんですコイツ!」


 が、僕はそんな親友の必死のフォローも押し退け。


「謝って下さいよセンパィ! トーマスに!」

 さらに声を荒げる。


「ブフフ……不細工に不細工と言って何が悪ぃ?」


 ……ッッッ!!! なんと言うテンプレのかませキャラ! 筆者が思うに作品のレベルは敵キャラの質によって決まるというのに……ッ!

 バカなヒロインは度が過ぎなければ可愛い。が、見え見えのかませ雑魚キャラなど、作者の低学を露見するような失笑だ! いやナニ言ってんだ僕は!?!?


「……取り消す気は……ないんすか? だったら、腕づくで謝って貰いますよぉ!?」

「腕づくぅ……!?」


 カーチンの瞳の色が変わる。目の奥に蔑称や挑発といった感情でなく、はっきりとした怒りが燃え上がる。

 流石にのっぴきならない状況になってきた。

 ドスモウ部その他の男子部員はガタガタと震え、何名かの女子たちが仲裁のため練習部屋に侵入する。

 トーマスは慌てふためき、僕とカーチン先輩の間に入る。


「や、やめろタクマロ! 俺はいいんだ! こ、こんな所で先輩と問題を起こしたら大変だぞ!? 俺が……俺が耐えれば済むことなんだッッ!!」


 悲痛な叫び、その目尻には涙さえ浮かんでいる。

 僕は――トーマスの肩を優しく掴み、真っ直ぐに彼の澄んだ瞳を見つめ返す。


「大丈夫だトーマス……僕は、負けやしなぃ……ッ!!」

 自信に満ち溢れた、力強い声。トーマスを押し退けた。そして、


「センパィ――――ドスモウで、勝負っス!」


「「「!!!?」」」


 専用部屋に一気に張り詰めた空気が走り抜けた。


 ………………………なんだこの展開???(作者が)



     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 僕は上着を脱ぎ捨て、ワイシャツも一気に剥ぎ取る。さらに肌着のTシャツまでも脱ぎ去って上半身を露わにした。


「「「キャアアアアアアア~~~~ッッッッ♥♪」」」


 109㎏、でっぷりと太りパイ毛まみれの黒乳首。皮の弛んだシミだらけの肌。多めの脇毛、臭い立つ汗汁臭。

 日本でこの状況でやったら、何名か気分が悪くなって保健室に運ばれかねない肉体美を前に、取り巻きの女子たちは嬌声にさえ近い悲鳴をあげた。


「……ブフフ、本気か? 男子ドスモウ部エースの俺と、ドスモウで勝負だと? 勝負するまでもない、無礼は許してやるから、とっとと謝って帰るがいいブフ」

「……自分引く気ないっスよ。謝るのはセンパイっす。まわし(?)を貸して下さい。ルールを説明して欲しいっス!」

「ブフフ……愚かな、いいブフ! 身の程をわきまえさせてやるブフ!」


 僕は更衣室へと案内される(なぜここで脱いだし)。泣きそうな目で見つめるトーマスにルールを聞きながら、僕はカーチン先輩の予備、金色ラメ入りのスパッツと丈短なタンクトップを着こんだ。再び戦場へと戻る。

 どこから噂を聞きつけたのか、ドスモウ部専用部屋は凄い数のギャラリーが溢れていた。


「キャアアアアア~~~!! タクマロ君のバトルコスチュームよぉぉぉ!?!?」

「ムッチムチだわぁ! 下乳がはみ出てるぅぅうぅぅ!?!?」

「おへそ丸見えぇぇぇ~~!?!?」

「カーチン先輩と一騎打ちですって!?」

「次の聖戦はカーチン×タクマロで決まりね!」

「何言ってるのよタクマロ×カーチンでしょ!?」

「薄い本早ぉ!?」


 もうどにでもしてくれ……(作者が)。


 カーチンは既に土俵入りし、リングの中央で腕を組んでふんぞり返っていた。

 その顔は万が一にも負けるなどと考えていない自信に溢れている。

 タクマロも続いてリングイン。両者早くもリング中央で火花を散らす。


「タクマロとか言ったな……貴様、ドスモウの経験はあるのか……?」


 その質問に僕は一瞬悩み、

「……似た競技の、経験者っす」

 と答えた。


 剣術は蒼天紅牙流免許皆伝だけど、“剣道”の経験はないっすね~~とか言っちゃう主人公は嫌いだ(剣道と剣術はまさに別物だけど)。

 なんか剣道やその他の競技を見下している感じだし、騙し討ちもいいところだ。確かに僕はドスモウの経験はないけど、相撲は……――あれ? 一年の4月から1月まで……。十ヶ月? 一年経験ないの僕??? もう十年くらいシゴかれてると思ったのに??

 ……ま、まあ……それはそうと!


「ルールは覚えたかブフ?」

「……リングから出たら負け、ギブアップで負けっスね」


 そう、これが相撲との違いだ。土俵から出さえしなければ、膝が付こうが手が付こうが負けにならないのだ。ネーミングセンスはアザゼルさんなのに、ルールはハンター×ハ●ターなのだ(魔法水見式とか出した時点で、もう伏字にする意味がないだろ)。

 お陰で寝技での攻防や関節技に絞め技、ギブアップでの決着があるが、それ以外はパンチに蹴りは禁止、張り手はあり。まあだいたい相撲だ。


「ブフフ……今謝るなら、手加減してやらなくもないブフ?」

「……――ッ!」


 つか、なんでいつの間に笑い方が語尾になってんだよカーチン先輩。

 カーチンは軽く足場を慣らすと、先んじてしゃがみ込む。蹲踞そんきょの体勢だ。

 タクマロはそれを見て――一つの確信に至った。


(……多分、多分だけどそれほど強くは……ないな)

 見た目は朝青龍に似てなくもないけど。


 柔道の達人は、敵が道着を着る動作で相手の力量がわかるという。

 無論相撲歴10ヶ月のタクマロにそれだけの眼力はない。が、


(……蹲踞が安定してない、少しふらついている。さっき見た鉄砲は中々だったけど、下半身はそれほど強くないな)

 タクマロはそこまで見抜いていた。

 勿論三味線を引いている可能性はあるし、できれば一度くらい本気の立ち合いを見学してから挑みたかったが、それではやはり不意打ちだ。


 タクマロは、足を高々と上げ、その場で四股を見せた。ズン――!


「「「~~~!?!?」」」


 全盛期の貴乃花には及ぶべくもないが、一応それなりに下半身が安定している。

 カーチンの目から、微かに余裕と油断が消えた。

 アールドワース1の人気スポーツということもあり、ギャラリーたちも息をのむ。タクマロが決して見よう見真似の素人ではないことがわかった。

 闘う前に極力手の内は曝したくない、でも騙し討ちで勝っても意味がない。この四股は、せめてもの礼儀だ。

 蹲踞の姿勢で正面から向かい合う。

 もうこの先は言葉ではない。男と男が身体と肉体で語り合うのだ。


 ドスモウ部男子部員たちも、審判三人を覗いて緊張した面持ちで見守る。

 ドスモウ部屋が傾きそうなほど押しかけているギャラリーたちも、固唾を飲んで注目する。

 トーマスが――祈るように胸の前で手を組んだ。


 もう後戻りはできない――副審が二人リングの下に立ち、主審へ目を向ける。行司役のレフェリー、紫のスパッツの美少年が睨み合う二人の前で、手刀を三度、縦に切る。


「レディ? セッツ(SET)!」「セッツ!」「セッツ!」

 主審、副審、副審の順。


 緊張の一瞬――誰もが掌に汗を握った。


「ハァァッッツ(HET)!!!」


 主審が手刀を上げ――二名の肉膨れが立ち会い、正面から衝突しあった!

 大歓声がドスモウ部屋をどよもした。

いやなんで掛け声がアメフトなんだよ。

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