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「くそ……あのエロ爺、人をおちょくりやがって……大体どうして透明の時に扇子が当たるんだよ……」
ズキズキと痛む額を押さえながら晶と二人、学校へ向かう。
晶に実体化させてもらった惣一。今は普通の人間呈で歩いている。が、どうにも歩きづらい。多分、月面で歩行するとこんな感じではないだろうか。本物の体でない為か異様に軽い。半透明時のような宙に浮く程のものでは無いが、それでも、この場でジャンプすれば軽く目の前の電信柱のテッペンまで到達するのではなかろうか。
「宮司だからな」
せっせと隣を歩く制服姿の小さな晶が、前方を見ながら素っ気無く答えた。
「宮司だから、で片付けられる事かよ」
「宮司の霊力は凄まじい。私など足元にも及ばない。一瞬で鉄扇に霊力を通し幽体に影響を与える物に変質させる位造作もない事だろう」
「鉄……扇……?」
「ああ。鉄扇だ」
「どうりで。『扇子が当たった』にしちゃとんでもないと思った……」
「ああ。とんでもなかった」
「………………ひょっとしなくても、伝わったのか。痛み」
無言で前方を見つつ歩みを進める晶の額に、横から手を伸ばす惣一。真っ直ぐに切り揃えられた黒い前髪を掻き揚げると成る程、真っ白な額の一部が真っ赤に腫れあがっていた。
目にした直後、惣一に罪悪感にも似た感情が湧き上がった。失念していた。感情が伝わるのなら、痛みも伝わるはずだ。
「……な、なにを……して……!」
見ると、前髪を掻き揚げられた晶がわなわなと体を震わせていた。あ。耳まで赤くなってる。それにしてもこいつ、色白いよな。
「悪い。知らなかった。傷を受けたらダイレクトに一守に伝わるんだ」
晶から離れる。と、前髪を素早く整えた晶が、未だ赤く染まる顔に普段の無表情を作って口を開いた。
「だいれくと、というわけではない。ミコシバが傷を負った所で私は腫れ上がる程度だろう」
「そうなの?」
「ああ。そういう術をかけているからな」
言われてみれば。自分の額にはタンコブが出来ているのだが、晶の額は腫れあがっている程度だ。ふぅん。怪我をしないのなら、そんなに気にする必要ないのかな。でも痛みはしっかり伝わっているようだから……。
そこまで考えて、惣一ははたっと立ち止まった。
「……と、そうだ。病院寄ってかなきゃ」
「病院? 何故だ」
「鞄そっちだし。大体登校ラッシュ時におまえと肩並べて学校なんか行ったら相当目立つし。なにより病院の状況が気になるし。さすがに家族の一人も連絡付かないとさ、学校に連絡されちまうだろ。制服でどこの高校かはモロバレだしさ」
「自宅には誰もいないのか」
「言ったと思うけど、今両親とも旅行してて、俺は一人っ子。まぁ、都合よかったけどな。居たら居たで今頃大騒ぎだって」
「……そんなものか」
「そんなもんだろ? あのじーさんだって凄まじそうじゃん」
「そうか?」
「おまえって一人娘なんだろ。俺と同じような事故に遭ったらあのコスプレじーさんだって血相変えて騒ぐと思うぞ」
「…………そうだな。私がおまえと同じような事故に遭ったら……考えるに、宮司の場合」
「うん?」
「目が合った瞬間に、不甲斐無い、と。とどめをさしてくるだろう」
「…………そうなの」
「ああ。兄が家を離れた時もそうだった」
「……兄。一守、お兄さんがいたの?」
「そうだ。数年前までは」
「数年前までって?」
「兄が家を出て行った後、宮司が、あれは最早他人。兄とするなと」
「そりゃ確かに。凄まじいな……」
病院にて、患者の双子の兄と名乗った惣一は、当然のように病室に案内される。
昨日同様、集中治療室のベッドに寝かされていた自分の体。なんでも外傷は軽いらしく、これから精密検査を受けた後、異常がみられなければ一般病棟に移されるそうだ。意識もすぐに回復するだろうと説明された。
(んな訳ねーし。意識、外、出歩いてマスから)
話を聞きながら皮肉に笑うと、一度だけ晶がチラッとこちらを見上げた。
その後、保管されていた鞄を受け取って、晶と二人、高校に辿りついた頃には、校舎にかけられた大きな丸時計の針はすでに十一時をまわっていた。
当然授業中である。
「御子柴! おまえ大丈夫だったのか!?」
教室に入るなり数学教師の大声と、クラスメートの好奇の視線を浴びせられ、大きく仰け反る惣一。
「な、なんすかそのリアクションは……」
「こっちのセリフだ! おまえ大丈夫なのか? 海道先生はどうした?」
「海道先生?」
唐突に出された担任の若く頼りない女教師の名に首を傾げる惣一。数学教師は持ち前のよく通る声で「あれ?」と不思議そうに呟きながら後頭部を掻く。
「昨日の夕方、病院から、家族と連絡がつかないからと学校に電話が入った。海道先生が血相を変えて飛び出していってな。昨夜はずっとおまえに付き添っていたと、そう聞いたんだが……」
……遅かったらしい。
となると、旅行中の親にも既に学校の緊急連絡で伝わってしまったはずだ。
……そりゃあそうだよな。そうくるよな普通。惣一は小さく舌打つ。昨夜は色々ありすぎてそこまで頭が働かなかったのだ。担任と病院で出くわさなかったのだけは本当に幸運だった。如何に担任が天然だろうと「実は双子でした!」なんてギャグはとても通用しなかっただろう。惣一はこっそりと胸をなでおろす。
「自分が起きた時には先生いなかったんで、知りませんでした。……ちなみに海道先生て、今どこいます?」
「ついさっき――休み時間に職員室に顔を出されたぞ。校長に報告した後また病院に戻ると言っておられたが……」
「げ」
思わず呻いてしまってから慌てて自身の口を塞いだ。
今病院に行かれちゃ困る。あっちには"体"が寝ているのだ。同時刻に御子柴惣一が二人存在している事がバレてしまうではないか。
視線に見上げれば、益々怪訝そうな表情の数学教師。彼が開口する前に惣一は咳払いを一つ。精一杯、平静を装う。
「先生、まだ職員室にいますかね。顔出してきます。付き添ってくれた礼も言いたいし」
「ん、あ、あぁそうだな。そうしなさい。……しかし、本当に大丈夫なのか御子柴」
「ぴんぴんしてますって」
逃げるように教室を出る。後ろ手で扉を閉めると、惣一は深い深いため息を一つ吐いた。
散々泣き喚く海堂を宥めた後、職員室を出た惣一は携帯電話を取り出そうとして、ふと室内の時計を視界に入れる。時刻は十一時半。登校してからまだ三十分も経っていなかった。ふいに晶の無表情が頭を過ぎる。そういえば一守の奴、屋上で待つと言ってたっけ。
冬の屋上。寒くない訳が無い。職員室から一番近い、中庭の自販機に足を進めた惣一はそこで、自販機横のベンチに腰掛けてオレンジジュースを飲む級友の姿を発見する。
「あれ? 水戸?」
声をかけると、ベンチの背に凭れかかったまま、気だるげに惣一を見上げて「うーす」と片手を上げた。
水戸光國。惣一とは中学からずっと同じクラスで、いわば腐れ縁だ。さらさらの茶髪に高身長。整ってはいるがどちらかと言えば女顔で、声も男にしては高い。背が伸びる前――中学までは、私服で居ると頻繁に女子と間違えられ声をかけられたらしい。以上の経緯から本人は己の顔を嫌っているのだが、女子にはやたらとウケがいい。というか、身長が伸びはじめてからは実際にモテてる。
「昨日は大変だったみたいだなーミコちゃん」
どこか気だるそうないつもの光國の様子に苦笑を浮かべる惣一。こうしてダチとくっちゃべってるとなんだか、昨日の事が全部夢だったみたいだ。
「まぁな。っていうか、なんでこんなトコに居るんだよご老公」
「見て解んだろ。俺っちはサボリ。おまえ程じゃないけど、昨日はバタバタしてたからタルくてさー。んで? ミコちゃんこそ、どったの」
「俺は……まぁ、俺もサボリかな」
自販機のボタンを押し、缶コーヒーのホットを二つ落とす。
拾い上げるのを見て水戸が笑った。
「ひでーな。俺っちが飲めないの知っててそれ?」
「安心しろ。てめぇのじゃねぇから」
意外そうに瞳を見開く水戸。
「お仲間がいる訳?」
「まな。ンじゃそういう訳で」
「……今日は訊かないんだ? 飯沼一華嬢、マル秘情報」
踵を返しスタスタと校舎に向かう惣一の背に、懐から取り出した黒い手帳をヒラヒラさせる水戸。
「あるぞ~とっときの新情報」
……まったく、なんでこんな女みたいなきれーな面した奴が、我が校始まって以来のド変態達が集ったと言われる新聞部改め、アイドル発掘し隊の部長なんだろう。
光國が度々「この紋所が目に入らぬかー」と気だるげに男子生徒に掲げているあの手帳は、アイドル発掘し隊の発行する『美少女図鑑(県内版)』の……いわばネタ帳である。
足を止めてぐぬぬ……と唸る惣一。しばしの葛藤の末、苦笑いを浮かべつつ光國を振り返った。
「今度聞かせて。水戸光國ご老公様」
「ちぇ。折角ミコちゃん驚かせようと思って仕込んだネタなのにさぁ。付き合い悪いんでやんの」
ふてくされたような顔で缶ジュースを一気飲みする水戸に謝る仕草をしつつ校舎に入る惣一。
その様子を横目で見つつ、光國はぼそりと呟いた。
「……ネタばらしの時期。どう考えてももう過ぎてると思うんだけどなー、お嬢」
「だぁから、本当に大丈夫だって。声聞けばわかるだろ? Uターン帰国なんてする必要なし! 安心して。うん……うん。それじゃ」
ホットコーヒー二缶を腕に抱え、屋上の重い扉を肩で押し開けた惣一はうんざりした顔で携帯を切る。「ったくあの馬鹿親……毎度毎度心配しすぎだっつの」ボヤき声に驚いた顔でこちらを振り返った晶は瞳を見開いたまま口を開いた。
「どうした」
危険だという理由で生徒に解放されていない屋上にはベンチは勿論、転落防止のフェンスすら設置されていない。思っていたよりも狭く殺風景な風景の真ん中でたった一人、晶はぽつんと立っていた。
「じゅぎょう、とやらは終わったのか?」
惣一は問いに盛大なため息を返す。
「抜けてきたっつうか。義務果たしてきたっつうか、サボりっつうか。このままここに居たって誰にも文句言われない状況が完成してる」
「では何しに来た」
「なにしにって……ほら。どうかなって様子見に」
缶コーヒーで両手が塞がっていたので、顎で晶を指す。
キョトンと突っ立っている晶に近寄ってコーヒーを一缶手渡すと、無表情で大きく首を傾げた晶は頭を元の位置に戻しつつ口を開いた。
「校舎全域に私の力が届くよう数箇所に陣を設置し終えた所だ。実体化に支障はない」
「じゃなくて。寒くないかなとか思って…………愚問だったな。こりゃ寒い」
晴天下の屋上ではあるが、季節は十一月も半ば。未だ日差しは強いが日に日に北風は勢力を増し、今日も今日とて容赦なく吹きつけてくる。
黒髪を四方八方に乱された晶はしかし、気持ちよさそうに瞳を閉じた。
「風が気持ちいい」
「いや寒いって。ただでさえおまえ寒々しい格好してるってのに」
言って惣一は手にしていた缶コーヒーを開け、口を付けた。
それを見た晶も、見よう見まねで缶のプルタブを開け、恐る恐る口を付ける。一瞬顔を顰めた後、ふむ、と頷いてグビグビと喉を鳴らす事、数十秒。……え、まさかの一気飲み? 惣一が唖然とその様子を見守ると、腰に片手を当て、どうやら飲み干したらしい晶がぷはーっと息を吐いた。
「温まった。礼を言う」
「……そりゃどーも。もうちょい女子らしくチビチビ飲んでくれると、まだまだ防寒として役立ったはずなんだけど」
「しかし、独特の風味の茶だった……」
「コーヒーだから。それ、コーヒー」
「そうか、こーひーというのかこの茶は」
「だから、茶じゃないってソレ」
缶を掲げて書かれた英字を指し示す。
キョトンと晶は、手にしていた空の缶に視点を落とした。数秒後大きく首を傾げる。……そういや、「学校に通った事はない」んだっけ。読めんのか。英語。
「しっかし、温まったっつっても。この後もこのままここに突っ立ってる気? さすがに寒くね?」
「しかし、用意された衣服はこれだけだった。ミコシバの視覚にどれだけ寒々しく訴えかけようが、こればかりは慣れてもらうしかない」
「だから、俺はいいから。……そのマフラーだけで防寒になるの?」
「まふらー?」
「それ。首に巻いてるじゃん」
晶の首元を覆う暖かそうな茶色のマフラーを指す。登校時には気づかなかったが、鞄の中に入れてあったのだろうか。
「これはマフラーなどではない。イタチ守だ」
怒られて、今度は惣一がキョトンとする番だった。
「…………いたち、のかみ?」
「今のミコシバと同じ事象だ」
「……俺と同じ……って事は、ひょっとして実体化ってやつ? イタチの幽霊なの? それ」
「違う。イタチ守は動物精霊だ。式をお願いしている」
「シキ? そういえばちょくちょく聞くけど……それって結局なんなんだ?」
晶は僅かに眉を動かし、考えるような仕種をしてから、
「すまない。正式には式守と呼ぶ」
と、告げた。途端に惣一の目が大きく輝いた。
「しきがみって、式神か! すげー本格的に陰陽師だな」
「一守は陰陽師ではない」
「でも、神社の神主の家だろ?」
「神主が皆陰陽師という訳ではない。一守は巫覡を名乗る」
「フゲキって……訊くけど、陰陽師とは違うの?」
「ああ。血と道具、陣を用い、式守を身に降ろし使役する」
「それって陰陽師じゃん」
「陰陽師とは異なる。彼らは言霊と術を生成し、式神と易を操る。巫覡にはない力だ」
「似たようなものだと思うけど……」
「違う。そもそも彼らの式と巫覡の式は違うのだ。彼らは己の霊力を用いて式――式神を使役する。巫覡は、元々は神招ぎ――超物理的な存在を己の身に降ろすのみの存在。使役するには巫覡具を用いて自我を制御する必要がある」
「超物理的な存在って……俺もかよ。俺を数珠に入れたのも使役するつもりだったのか」
「悪いが。私は動物精霊専門だ」
「専門って……そんなんあるの?」
惣一に問われ、途端に顔を赤くした晶は軽く咳払いをした。目を瞑り気難しそうな表情を作る。
「おまえの場合、目的は使役ではなく昇天だ。経験上、死直後の混乱状態にある霊に状況説明を行うのは困難だと認識している。私は一旦数珠に入れ霊を鎮めてから行う事にしている」
「なんで俺が生きてるって解らなかったの?」
「…………すまない」
「いや、責めてるわけじゃなくて、普通に疑問。一守って言動から何から、漫画で見るような本格的な霊能力者だし。実際そんな力あるのに、なんで解らなかったのかなって」
「言い訳はしない」
「だから。責めてるんじゃないって。理由が知りたいだけ。何、おまえドジっ子?」
むっとした顔で惣一を見上げる晶。
「おまえの場合は例外だ。おまえは幽体に霊力を纏っていた。だから、てっきり死んだものと」
徐々に声が小さくなり、視線が足元に下がる。そんな黒目の動きを惣一はキョトンと見ていた。
「れいりょく? 俺にもあるのか?」
「あぁ。今も目に見えるくらいに」
惣一は目を丸くする。
「嘘だろ。俺不思議体験なんて生まれてこの方、した事も見た事も聞いた事もないんだけど」
惣一の言葉に、晶の黒瞳に動揺の色が灯る。
「……そんなはずはない」
「俺が嘘ついてどうすんだよ」
「…………それはおかしい」
「おかしいて」
「通常生霊は霊力を纏わない。なのにおまえは纏っていた。さぞや力の強い者なのだろうと思ったのだが……」
不自然に言葉を切る晶。不思議に思った惣一は晶の横顔を覗きこむ。幼さの残る顔立ちに厳しい表情。大きなつり目がちの黒眼は鋭く遠方を射ていた。
「…………何事?」
「力を感じる」
瞬間、晶が地を蹴った。
「え?」
晶の持っていた缶が惣一の足元に落ちる音が響いたその時には、小さな体は屋上の端へ移動を果たしていた。
「なんつう速さだあいつ……飛んでるんじゃないのか!?」
慌てて惣一が後を追う。勝手が違う体で、走るのに手間取った。
「……なんだあれは」
晶は屋上の縁の一段高くなっている部分に立ち、身構えていた。風に靡く黒髪が晶の表情を隠してしまって呟きの真意は窺えない。
「どしたの急に!?」
横に並び、晶と同じように視線を下に投げる。晶の視線の先――校門の傍に、聖武 女学院の制服姿の女が一人、長い茶髪を靡かせていた。
顔はここからでは見えないが……彼女の方も、なんとなくこちらを見ているような気がする。
「あれは……」
「知っているのかミコシバ」
「知ってるっつうか……この辺じゃ有名だよ。高台に建ってる金持ち女子高の制服。だけど……」
なんでこんな時間に印場高に居るんだろう。しかもあの姿ってもしかして……惣一の呟きを、しかし晶は聞いていなかった。
「信じられん。何故今まで判らなかったのか」
「何が」
「ここまで接近を許すとは、私と同じ力……いや、それ以上だ。まさか既に彼女の手にあったとは……」
「は?」
「……行くぞミコシバ」
「行くって……おい、危ないだろ! それ以上踏み込むな」
「問題無い。むささび守を喚 ぶ」
「は? む、ムササビがどこに……っておいぃ!?」
晶が屋上から飛び降りた。ミコシバの手を引いて。
「う、うわ…………!」
惣一の手から落ちた缶の音が、誰も居ない屋上に響いた。
冬空の澄んだ青が視界いっぱいに広がる。
惣一と共に落下しながら、晶が空いている方の手で、印を三つ結ぶ。瞬間、眩い光を帯びた数珠を顔の前に翳した。
「むささび守」
静かな呟きと共に、暴力的な風が――重力が相殺される。恐る恐る惣一は目を開いた。
「!? 浮いて……、…………………………いや」
風に乗っている。
不思議で心許無い感覚に惣一は思わず中空でしりもちを付いた。
幽体時、宙に浮いていた状態とはまた異なる。まるで不可視の空飛ぶ絨毯に乗っているかのような感覚だった。
ゆっくりと地に下りる晶。惣一はそのままぺたりと地に尻を着けた。
「……すげ……まじに陰陽師」
「だから、陰陽師ではない」
声に見上げると、晶はいつのまに出したのか竜角を構え、対峙していた。
晶の身の丈以上の刃が日の光を受けて輝く。
「まさか、おまえが既に竜玉を継承していたとは。……しかし、飯沼ならなんの不思議もない」
「…………いい、ぬま……?」
聞き慣れた名に、惣一はさらに視線を奥へ。
――剣先の向こうに、柔らかそうな茶色の長い髪。
晶と対峙していた華奢な体つきの女が一人、柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
「答えろ。何用だ、飯沼一華」
「私は……会いに来たの。貴方達に」




