森の暴走-05
夜の森を、一年生たちが駆け抜ける。
教師たちが時間を稼いでいる間に、一人でも多く、安全な場所へ。
それがクラウスの命令だった。
第一班も、西の尾根道へ向かって走っていた。
ノアが先頭で周囲を確認し、レオンが最後尾を守る。
リリアとミリアは班の中央で足並みを合わせていた。
「この先を右!」
ノアが短く指示を飛ばす。
「倒木があります、飛び越えて!」
四人は迷うことなく従う。
その時だった。
ガサッ!
茂みが大きく揺れ、三匹のゴブリンが飛び出してきた。
だが、その目はノアたちではなく、後方へ向いている。
恐怖に駆られ、逃げ道を探しているようだった。
そのうちの一匹が進路を変え、第一班へぶつかるように走ってくる。
「来る!」
ミリアが声を上げた。
レオンは一歩前へ出る。
「ノア!」
「三十秒!」
ノアは即座に答える。
「十分だ!」
レオンは力強く笑うと、剣を構えた。
「先へ行け!」
飛びかかってきたゴブリンの棍棒を受け流し、そのまま柄頭で顎を打ち抜く。
一匹目が地面へ転がる。
間髪入れず、二匹目が迫る。
レオンは半歩だけ踏み込み、鋭い横薙ぎで武器を弾き飛ばした。
勢いを失ったゴブリンは、そのまま木へ激突する。
三匹目は恐怖に駆られたまま方向転換し、森の奥へ逃げ去っていった。
「よし!」
レオンは周囲を一瞥する。
「道は開いた!」
その声に、ノアは振り返った。
「レオン!」
「もういい!」
レオンはすぐさま踵を返し、三人へ追いつく。
「待たせた。」
「三十秒どころか、二十秒だったね。」
ノアが笑う。
「約束は守る主義だ。」
レオンも口元を緩めた。
しかし、その笑みは長く続かなかった。
ドォォン!
背後から、これまでよりも大きな衝撃音が響く。
地面が揺れ、木々の葉が一斉に震えた。
四人は思わず足を止める。
「先生たち……。」
リリアが振り返る。
遠く、木々の隙間から夜空が赤く染まるのが見えた。
炎の魔法だ。
セシルたちが応戦しているのだろう。
ノアは唇を噛み締める。
(お願いだから……持ちこたえて。)
その願いが届くかのように、再びクラウスの怒号が風に乗って聞こえてきた。
「行けぇぇぇっ!!」
その一声が、四人の背中を強く押した。
「走ろう!」
ノアが叫ぶ。
第一班は再び夜の森を駆け出した。
教師たちが命を懸けて繋いでくれている、その時間を無駄にしないために。




