予定外-05
どれほど時間が過ぎただろうか。
見張りの交代を終えたノアは、テントの中で浅い眠りについていた。
その時だった。
――ゴォォンッ!
森の奥から、鈍く重い音が夜の静寂を切り裂いた。
まるで、大木が倒れたような轟音。
ノアは勢いよく目を開いた。
「今の音……!」
隣ではレオンもすでに起き上がり、剣を手にしている。
「外へ出るぞ。」
二人がテントを飛び出すと、向かいのテントからリリアとミリアも慌てて姿を現した。
「何があったの?」
「分からない。」
ノアは森の奥を見つめる。
その時。
バサバサバサッ!
突然、森の奥から無数の鳥が一斉に飛び立った。
夜空へ舞い上がる黒い影。
その数は異様だった。
まるで森全体が騒ぎ始めたかのように。
周囲の生徒たちもざわめき始める。
「何だ?」
「魔物か?」
「こんなの演習で聞いてないぞ!」
野営地の中央では、教師たちもすでに集まっていた。
セシルが森を見つめながら言う。
「大きな魔物でしょうか……。」
クラウスは鋭い目で闇の奥を見据える。
しばらく耳を澄ませると、小さく首を振った。
「……違う。」
その声は低く、重かった。
「この音は一匹じゃねぇ。」
セシルの表情が変わる。
「では……。」
クラウスはすぐに周囲の教師たちへ指示を飛ばした。
「全教師、警戒態勢!」
「担当区域を確認しろ!」
「はい!」
教師たちが一斉に動き出す。
その様子を見ていた一年生たちの緊張も一気に高まった。
ノアは森の奥を見つめたまま、小さく呟く。
「……来る。」
「え?」
リリアが振り向く。
ノアは答えず、ただ闇の向こうを見つめ続ける。
耳を澄ませる。
風の音。
木々の揺れる音。
そして――。
ドドドドド……。
地面を伝う、かすかな振動。
何かが、こちらへ向かってきている。
しかも、一つや二つではない。
夜の森から聞こえてくる足音は、刻一刻と大きくなっていた。




