予定外-04
夜も更け、野営地は静けさに包まれていた。
焚き火の炎は小さく揺れ、遠くからは小川のせせらぎが聞こえてくる。
各班は交代で見張りを立てていた。
第一班の最初の見張りは、ノアとレオンだった。
二人は焚き火から少し離れた場所に立ち、野営地の周囲へ目を配る。
しばらくは風の音だけが流れていた。
「静かだな。」
レオンが小さく呟く。
「うん。」
ノアも森を見つめたまま答える。
「昼間から、ずっとこんな感じなんだ。」
レオンは横目でノアを見る。
「まだ気になるのか?」
「……うん。」
ノアは正直に頷いた。
「理由は分からない。」
「でも、何か引っ掛かる。」
その言葉に、レオンは森へ視線を向けた。
木々は静かに揺れている。
異常は見当たらない。
それでも、レオンは首を振らなかった。
「俺には分からん。」
「でも、お前は今日一日、何度も森を見てきた。」
ノアは少し驚いたようにレオンを見る。
「だから、お前が気になると言うなら、俺も警戒する。」
「レオン……。」
レオンは苦笑した。
「俺は剣には自信がある。」
「だが、森のことはお前ほど知らない。」
「なら、詳しい奴の意見を信じる。」
「それだけの話だ。」
ノアは思わず笑みをこぼした。
「ありがとう。」
レオンも小さく笑う。
「礼を言うのは早い。」
「何も起きなければ、それが一番だからな。」
「うん。」
二人は再び森へ目を向ける。
風が吹き、木々が揺れる。
夜の森は昼間とは違う表情を見せていた。
その時。
カサッ――。
小さく草を踏む音が聞こえた。
二人は同時に音のした方を見る。
暗闇の中から姿を現したのは、一匹のホーンラビットだった。
こちらに気づくと、ぴょんと跳ねて森の奥へ消えていく。
レオンが小さく息を吐く。
「驚かせる。」
ノアも肩の力を抜いた。
「……うん。」
しかし。
ホーンラビットが逃げていった方向を見つめたまま、ノアの表情は晴れなかった。
(あの子……。)
(何かに怯えていたような……。)
確証はない。
暗闇の中、一瞬見えただけだ。
気のせいかもしれない。
そう思いながらも、胸の奥の違和感だけは、ますます大きくなっていくのだった。




