予定外-01
夕暮れ。
第一班は予定されていた野営地へ到着した。
森が少し開けた広場には、すでにいくつかの班が到着しており、教師たちが手際よく人数を確認している。
「第一班、到着しました。」
ノアが報告すると、名簿を手にした教師が頷く。
「四名、全員そろっていますね。」
「はい。」
少し離れた場所では、クラウス・フェルナーが腕を組みながら全体を見渡していた。
その隣には、副担任のセシル・アストレアの姿もある。
「今のところ、遅れている班はありません。」
セシルが報告すると、クラウスは満足そうに鼻を鳴らした。
「上出来だ。」
「ここまでは、な。」
その言葉に、セシルは小さく微笑む。
「ですが、一年生とは思えないほど落ち着いています。」
「特に第一班は。」
クラウスの視線がノアたちへ向く。
レオンが周囲を確認しながら荷物を降ろし、リリアとミリアも手分けして野営の準備を始めている。
その中で、ノアは地図を広げ、周囲の地形を見比べていた。
「役割分担も自然ですね。」
「ああ。」
クラウスは短く答える。
「誰か一人が目立つんじゃねぇ。」
「それぞれが、自分の役目を理解して動いている。」
その様子を見届けると、クラウスは大きく声を張った。
「よし!」
「全班、これより野営準備を開始!」
「日没までにテント設営、炊事、周辺確認を済ませろ!」
「質問はあるか!」
誰も手を挙げない。
「よし、始め!」
その号令とともに、静かだった広場が一気に活気づいた。
あちこちで杭を打つ音が響き、水を汲みに向かう生徒たちの姿が見える。
第一班も自然と動き出した。
「レオン、テントお願い。」
「任せろ。」
「リリアとミリアは夕食の準備を。」
「分かったわ。」
「はい!」
ノア自身は荷物を置くと、広場の外れへ歩いていく。
レオンが声を掛けた。
「どこへ行く?」
「少し周囲を見てくる。」
「すぐ戻るよ。」
広場を囲む木々へ視線を向ける。
風向き。
地面の状態。
獣道の位置。
そして、森の音。
耳を澄ませる。
昼間よりも静かな森。
何かがおかしい。
そう感じるのに、その理由だけが分からない。
「……気のせい、かな。」
ノアは小さく呟き、広場へ戻っていく。
その背中を、森の奥から吹いてきた一陣の風が静かに追い越していった。
木々はざわめく。
けれど、そのざわめきの意味を知る者は、まだ誰もいなかった。




