森が教えてくれること-04
太陽が頭上近くまで昇った頃。
ノアは地図と周囲を見比べながら足を止めた。
「この先に小川があるはず。」
「そこで少し休憩しよう。」
三十分ほど歩くと、木々の間から水のせせらぎが聞こえてきた。
澄んだ小川が森の中を静かに流れている。
「ここなら見通しも悪くないね。」
ノアが辺りを見回しながら言う。
レオンも周囲を確認し、小さく頷いた。
「休憩にはちょうどいい。」
四人は荷物を下ろし、それぞれ腰を下ろした。
森の風が心地よい。
小鳥のさえずりと水音が、緊張していた心を少しずつほぐしていく。
「じゃあ、お昼にしようか。」
ノアは背負い袋を開ける。
中から次々と布包みが現れた。
一つ、二つ、三つ……。
まだ出てくる。
レオンは思わず吹き出した。
「……やっぱり多いな。」
リリアも苦笑する。
「お母様、本当に心配性なのね。」
ノアは照れ笑いを浮かべながら頷いた。
「『班のみんなと食べなさい』って言われたから。」
「遠慮しないで。」
包みを開くと、干し肉や木の実を練り込んだ保存パン、乾燥果物、焼き菓子がきれいに並んでいた。
「わあ……。」
ミリアが目を輝かせる。
「全部手作りなんですか?」
「うん。」
「母さん、料理が好きなんだ。」
ノアは嬉しそうに答えた。
四人で手を合わせる。
「いただきます。」
一口食べたミリアが、ぱっと表情を明るくした。
「おいしい……!」
「保存食なのに、こんなに食べやすいなんて。」
リリアも感心したように頷く。
「味付けが優しいわ。」
「今度、お母様に教えていただきたいくらい。」
レオンも保存パンを口に運びながら笑う。
「これなら演習より食べ過ぎに気をつけないとな。」
四人の間に笑い声が広がった。
ノアはその様子を見て、どこか嬉しそうに微笑む。
その時、胸ポケットに入れていた小さな革のしおりが、ふと目に入った。
ノアは誰にも気づかれないよう、そっと取り出す。
押し花は、今も変わらず丁寧に挟まれていた。
壊れていないことを確認すると、小さく安心したように息をつく。
再び大切に胸ポケットへしまう。
その一連の動作に、誰も気づかなかった。
「そろそろ行こうか。」
ノアが立ち上がる。
レオンも荷物を背負う。
「午後も気を抜くな。」
「うん。」
リリアとミリアも立ち上がり、四人は再び森の奥へと歩き始めた。
穏やかな昼休憩。
それは、これから訪れる出来事の前に与えられた、ほんの束の間の安らぎだった。




