森へ-03
放課後。
第一班の四人は、演習に向けて空き教室へ集まっていた。
窓から差し込む夕日が、教室を淡い橙色に染めている。
ノアが机の上に演習の資料を広げた。
「えっと……。」
「まずは役割を決めた方がいいかな。」
三人も頷く。
レオンが腕を組んだ。
「前衛は俺がやる。」
「接近戦なら一番慣れている。」
異論はなかった。
リリアも続ける。
「私は後方から魔法で援護するわ。」
「索敵魔法も使えるから、周囲の警戒も担当する。」
「私は……。」
少し緊張した様子でミリアが口を開く。
「回復魔法と補助魔法なら、お役に立てると思います。」
「ありがとう。」
ノアは笑顔で頷いた。
「回復役がいると、すごく心強いよ。」
その一言だけで、ミリアの表情が少し柔らかくなる。
役割はほぼ決まった。
教室に短い沈黙が流れる。
レオンがノアを見る。
「で、お前は?」
「僕は……。」
ノアは少し考えてから答えた。
「地図を見たり、周囲を確認したりかな。」
「魔物の痕跡を探したり、進む道を考えたり。」
レオンは小さく笑った。
「つまり、一番周りを見ている役だな。」
「え?」
「それなら、状況を判断するのもお前が向いている。」
ノアは目を丸くした。
「いや、そんな……。」
「僕よりレオンの方が。」
レオンは首を横に振る。
「剣を振ることなら負ける気はしない。」
「だが、森全体を見る目はお前の方が上だ。」
リリアも静かに頷いた。
「私もそう思う。」
「今日の授業でもそうだったけど、ノアは全体を見て考えるのが得意だもの。」
ノアは困ったように頭をかく。
「でも、僕なんかが指示を出していいのかな……。」
その言葉に、今まで黙っていたミリアが、おそるおそる口を開いた。
「あの……。」
三人がミリアを見る。
「私も、ノア君がいいと思います。」
「えっ?」
「さっき話を聞いていて思ったんです。」
「ノア君は、自分がどう戦うかより、みんながどう動けばいいかを先に考えていました。」
ミリアは少し照れながら続ける。
「そういう人が、一番安心できる気がします。」
ノアは言葉を失った。
レオンは満足そうに頷く。
「決まりだな。」
「演習中、状況判断はノアに任せる。」
リリアも笑顔で手を差し出した。
「よろしくね、班長さん。」
「班長って……。」
ノアは苦笑しながらその手を握る。
「できる限り頑張るよ。」
その上に、レオンの大きな手が重なる。
「俺も協力する。」
「わ、私も!」
ミリアも少し慌てながら手を重ねた。
四人は顔を見合わせ、自然と笑みをこぼす。
まだ演習は始まっていない。
それでも、この瞬間、第一班はようやく一つのチームとして歩き始めたのだった。




