答えへ至る道-05
授業終了の鐘が鳴り響く。
「今日はここまでです。」
セシルが教科書を閉じると、生徒たちは一斉に息をついた。
「頭を使ったなぁ……。」
「魔法理論って、こんな授業だったっけ?」
そんな声が教室のあちこちから聞こえてくる。
ノアも教材を鞄へしまいながら、小さく息を吐いた。
「緊張した……。」
「ノア。」
声を掛けてきたのはレオンだった。
いつもの堂々とした態度のまま、ノアの机の前に立つ。
「さっきの説明、見事だった。」
ノアは慌てて首を横に振る。
「そんなことないよ。」
「僕も最後まで自信があったわけじゃなくて……。」
「だからこそだ。」
レオンは真っ直ぐノアを見る。
「自信がないから確認する。」
「その姿勢は、剣にも通じる。」
ノアは少し驚いたように目を瞬かせた。
剣の実力を認めてくれたことはあった。
だが、考え方まで評価されたのは初めてだった。
そこへリリアも歩み寄る。
「私も、勉強になったわ。」
「魔法陣って、完成されたものだと思い込んでた。」
ノアは少し困ったように笑う。
「僕も父さんに言われてたんだ。」
「『書いてあることを信じる前に、自分で考えてみろ』って。」
レオンが感心したように腕を組む。
「ガレス殿らしい教えだな。」
「剣だけじゃなく、学び方まで教えていたとは。」
リリアも静かに頷く。
「素敵なお父様ね。」
ノアは少し照れくさそうに笑った。
「うん。」
「僕の一番尊敬する人だから。」
その笑顔には迷いがない。
二人は顔を見合わせ、小さく微笑んだ。
その時、レオンがふと思い出したように口を開く。
「そういえば、来週から学外演習の準備が始まるらしい。」
「森での実習だったな。」
リリアも頷く。
「資料を読んだけど、魔物の生態も覚えないといけないみたい。」
ノアの表情が少し明るくなる。
「図書館に魔物図鑑があったよ。」
「今日、借りてみようかな。」
レオンは苦笑した。
「やはり、お前はまず本なんだな。」
「知っておけば、きっと役に立つと思うから。」
ノアは当たり前のように答えた。
その言葉に、レオンは大きく頷く。
「なら、俺も読んでみるか。」
「剣だけでは足りないかもしれん。」
リリアは嬉しそうに笑った。
「私も一緒に行っていい?」
「もちろん。」
ノアがそう答えると、三人は自然と教室を後にした。
まだ特別な約束を交わしたわけではない。
けれど、同じ目的へ向かって歩き始めたその足並みは、不思議と揃っていた。
それは、仲間と呼ぶにはまだ少し早い。
だが確かに、お互いを信頼し始めた者同士の歩幅だった。




