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神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
最下位の少年

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36/60

最下位の少年-03

 魔力測定が終わると、新入生たちは隣の剣術訓練場へ移動した。

 広大な円形の闘技場。

 壁際には観覧席。

 中央には、模擬戦用の区画が用意されている。


「次は身体能力及び剣術適性の確認を行う。」


 担当教官が告げる。


「魔力による身体強化も含めて、実戦での能力を見る。」


 その言葉に、新入生たちは気合を入れる。

 魔法だけが戦闘ではない。

 この国では、剣士もまた重要な役割を持つ。

 そして。

 魔力を使った身体強化。

 それこそが、現在の騎士たちの常識だった。


「では、開始する。」


 最初の生徒が呼ばれる。

 剣と剣がぶつかる。

 身体強化による速度。

 強化された腕力。

 観客席から歓声が上がる。


「やっぱり凄いな。」

「さすがルミナス学園。」


 次々と測定が進んでいく。

 そして。


「レオン・ヴァルハルト。」


 名前が呼ばれる。

 空気が変わった。

 レオンは木剣を受け取る。

 対戦相手も緊張している。


「お願いします。」


 開始の合図。

 次の瞬間。

 レオンの姿が消えたように見えた。

 踏み込み。

 一閃。

 相手の木剣が弾き飛ばされる。

 わずか一秒。

 圧倒的だった。

 歓声が起こる。


「すごい……。」

「これが公爵家……。」


 レオンは静かに剣を下ろす。

 しかし。

 その表情に満足感はない。

 まだ本気ではない。

 そんな顔だった。


「次。」


 名前が呼ばれていく。

 そして。


「ノア・アークライト。」


 一瞬。

 周囲がざわめいた。


「あの魔力量の?」

「剣もできるのか?」


 ノアは中央へ向かう。

 対戦相手は、同じ新入生の少年だった。

 貴族家の子息。

 彼は少し戸惑ったように笑う。


「悪いけど……手加減はしない。」

「はい。」


 ノアは木剣を構える。

 相手も構える。

 しかし。

 その構えを見た瞬間。

 相手の表情が変わった。

 ――何だ?

 派手ではない。

 力を込めている様子もない。

 なのに。

 隙がない。

 開始の合図。


「始め!」


 相手が踏み込む。

 魔力による身体強化。

 速い。

 普通なら見えない速度。

 しかし。

 ノアには見えていた。

 肩の動き。

 重心移動。

 呼吸。

 十年間。

 何千。

 何万回。

 剣と向き合ってきた。

 だから分かる。

 ノアは半歩だけ横へ移動した。

 攻撃が空を切る。

 そして。

 一歩。

 踏み込む。

 木剣が相手の手首へ触れる。

 次の瞬間。

 相手の剣が落ちた。

 静寂。

 一瞬。

 誰も声を出せなかった。


「……勝者、ノア・アークライト。」


 教官が告げる。

 ざわめきが広がる。


「今の……何?」

「見えなかった。」

「魔力強化してないのに?」


 ノアは首を傾げる。


「ありがとうございました。」


 相手へ礼をする。

 対戦相手は悔しそうにしながらも、素直に頭を下げた。


「……強いな。」

「いや。」


 ノアは首を振る。


「まだまだです。」


 その言葉に、周囲はさらに困惑した。

 普通なら喜ぶ場面。

 しかし。

 本人は本当にそう思っている。

 まだ父には届かない。

 まだ自分は未熟だ。

 ただ、それだけ。

 教官は記録を書く。


「剣術技術……非常に高い。」


 一瞬、筆が止まる。


「しかし。」

「身体強化が使用できないため、総合評価は平均以下とする。」


 ノアの評価欄。

 魔力。

 最低。

 剣術技術。

 最高水準。

 だが総合。

 低評価。

 その矛盾した結果を見て。

 レオンは静かにノアを見る。


「……。」


 初めてだった。

 魔力が低い。

 なのに。

 剣だけなら、自分と同じ領域を見ている。

 いや。

 もしかすると。


「……面白い。」


 レオンは小さく呟いた。

 ノア・アークライト。

 彼の中で、その名前の意味が変わり始めていた。

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