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神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
最下位の少年

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35/61

最下位の少年-02

 王立ルミナス学園、第一訓練棟。

 新入生たちは広大な部屋に集められていた。

 中央には巨大な魔導具が設置されている。

 透明な水晶柱。

 内部には淡い光が流れていた。

 入学直後の能力測定。

 この学園では、生徒一人ひとりの才能を把握するため、最初に必ず行われる。


「魔力量、魔力制御、属性適性を確認します。」


 担当教師が説明する。


「結果は今後の授業編成にも関係します。」


 その言葉に、新入生たちの間で緊張が走る。


「ついに来たな。」

「自分の才能が分かる。」

「俺は火属性が得意って言われてる。」


 期待に満ちた声。

 不安そうな声。

 様々な感情が入り混じる。

 ノアは静かに順番を待っていた。

 魔力測定。

 当然、不安はある。

 自分の魔力が少ないことは、十年前から知っている。

 でも。

 逃げる理由にはならない。

 名前が呼ばれる。


「リリア・ローゼンベルク。」


 周囲の空気が変わった。


「ローゼンベルク家のお嬢様だ。」

「新入生代表……。」


 リリアは落ち着いた様子で水晶へ手を置く。

 瞬間。

 眩い光が広がった。

 水晶内部を満たす魔力。

 測定器が高い音を鳴らす。


「魔力量……上級評価。」

「制御能力も非常に高い。」


 教師が感嘆する。

 周囲から歓声が上がる。


「さすがだ。」

「やっぱり凄い。」


 リリアは軽く礼をして戻る。

 その視線は、すぐにノアを探していた。

 そして。


「レオン・ヴァルハルト。」


 次に呼ばれる。

 公爵家嫡男。

 注目が集まる。

 レオンが水晶へ触れる。

 次の瞬間。

 リリアとは違う。

 圧倒的な光。

 魔力の密度。

 力強さ。

 教師の表情が変わる。


「……素晴らしい。」

「魔力量、制御能力ともに最高水準。」


 ざわめきが広がる。

 レオンは淡々と戻る。

 当然と言えば当然。

 彼は幼い頃から、その期待を背負ってきた。

 そして。


「ノア・アークライト。」


 名前を呼ばれる。

 一瞬。

 何人かの視線が集まった。

 リリアの隣にいた少年。

 それだけで興味を持つ者もいた。

 ノアは水晶の前へ立つ。

 手を置く。

 意識を集中する。

 魔力を流す。

 ――。

 何も起こらない。

 数秒。

 沈黙。

 教師が眉をひそめる。


「……もう一度。」


 ノアは言われた通り、力を込める。

 しかし。

 結果は変わらない。

 水晶の中心に、小さな光が灯るだけ。

 それは。

 あまりにも小さかった。

 教師が測定結果を見る。


「……魔力量。」


 一瞬、言葉に迷う。


「最低評価。」


 周囲が静まる。


「え?」


 誰かが声を漏らす。

 教師は困惑しながら続ける。


「魔力保有量は……一般的な成人の基準を大きく下回っています。」

「これは……。」


 言葉を選ぶ。


「幼児期の子供と同程度です。」


 ざわ。

 空気が揺れる。


「嘘だろ。」

「貴族なのに?」

「魔法が使えないってことか?」


 小さな声が広がる。

 ノアは黙って結果を見る。

 予想していた。

 分かっていた。

 だから。


「ありがとうございました。」


 頭を下げる。

 その姿に、リリアは拳を握った。

 悔しい。

 なぜ。

 なぜこの人の努力が、この数字だけで判断されるのか。


 レオンもまた、ノアを見る。

 しかし。

 彼が見ていたのは水晶ではなかった。

 ノア本人。

 魔力量は確かに低い。

 間違いなく。

 だが。

 普通なら、その結果を見た瞬間に落ち込む。

 自信を失う。

 そんな反応になるはずだった。

 なのに。

 ノアの目は、まだ前を向いている。


「……。」


 レオンは静かに考える。

 ――なぜだ。

 なぜ、この魔力量で。

 あれほど迷いのない目をしていられる。

 その疑問は、まだ答えを持たなかった。

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