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神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
再会の約束

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33/61

再会の約束-06

 王立ルミナス学園の寮。

 新入生用に用意された部屋は、決して豪華ではない。

 しかし、必要なものは全て揃っていた。

 机。

 本棚。

 寝台。

 そして、大きな窓。

 ノアは荷物を整理し終えると、椅子へ腰を下ろした。

 静かな夜だった。

 昼間の喧騒が嘘のように消えている。



「……長い一日だったな。」


 窓の外を見る。

 王都の夜景。

 無数の魔法灯が輝いている。

 村では見ることのできなかった光景。

 それを眺めながら、今日一日の出来事を思い返す。

 王立ルミナス学園。

 リリアとの再会。

 そして。

 レオン・ヴァルハルト。

 公爵家の嫡男。

 自分とは何もかも違う少年。

 ノアは苦笑した。


「すごい人ばかりだな。」


 もちろん、分かっていた。

 この学園に来る者たちは、皆それぞれの分野で選ばれている。

 魔法に優れた者。

 剣術に優れた者。

 知識に優れた者。

 自分は、その中で何ができるのか。


 ノアは手を握る。

 魔力は弱い。

 それは変わらない。

 明日になっても。

 明後日になっても。

 きっと。

 胸の奥へ意識を向ける。

 いつものように、小さな灯火。

 それ以上にはならない。


「……。」


 少しだけ、寂しさが込み上げる。

 もし自分にも、もっと大きな魔力があれば。

 もっと簡単に認められたのだろうか。

 そんな考えが、一瞬だけ浮かぶ。


 しかし。

 ノアは首を振った。


「違う。」


 小さく呟く。

 父が教えてくれた。

 魔力だけが強さではない。

 今日まで積み重ねてきた剣がある。

 努力がある。

 それだけは、誰にも奪えない。

 腰に触れる。

 父から受け継いだ剣帯。


「僕は僕のできることをする。」


 静かな決意。

 その時だった。

 胸の奥。

 普段は何も感じない場所。

 そこに。

 ほんの一瞬だけ。

 熱が走った。


「……?」


 ノアは胸元へ手を当てる。

 しかし。

 すぐに消える。


「気のせい……?」


 首を傾げる。

 十年前。

 リリアを守ったあの日。

 自分の力では説明できない何かが起きた。

 その記憶。

 けれど、それはもう遠い昔のこと。

 ノアは深く考えず、窓の外を見る。

 月が静かに輝いていた。


◇ ◇ ◇


 同じ頃。

 女子寮。

 リリア・ローゼンベルクの部屋。

 机の上には、一枚の古い押し花が置かれていた。

 十年前から大切にしているもの。

 リリアはそれを見つめる。


「……会えた。」


 今日何度思ったか分からない。

 夢ではなかった。

 本当に。

 ノアはいた。

 少し背が伸びていた。

 少し大人になっていた。

 でも。

 優しいところは何も変わっていなかった。

 リリアは小さく笑う。


「ノアは、きっと気づいていないんだろうな。」


 あの日。

 自分を助けた少年が。

 どれほど特別な存在になったのか。

 どれほど長い間、心の中にいたのか。

 きっと知らない。

 だから。


「今度は私の番。」


 リリアは窓の外を見る。

 同じ月。

 同じ夜空。

 遠く離れていた十年を越えて。

 ようやく、また隣に立てた。


「今度は、私がノアの力になる。」


 そう誓う。


◇ ◇ ◇


 そして。

 王立ルミナス学園の地下深く。

 誰も知らない場所。

 古びた石碑に刻まれた文字が、月の光を受けて淡く輝いていた。

『神枷』

 その文字が、一瞬だけ光る。

 まるで。

 十年前に選ばれた少年の存在を、確認するように。

 ――物語は、動き始めた。

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