再会の約束-02
王立ルミナス学園。
それは、王国中の才能が集まる場所だった。
広大な敷地。
中央にそびえる白亜の本校舎。
その周囲には、魔法研究棟、剣術訓練場、騎獣管理区画、図書塔。
まるで一つの街のような規模だった。
門の前に立ったノアは、思わず見上げる。
「……大きい。」
村にあるアークライト家の屋敷とは比べものにならない。
これほどの場所で、これから三年間を過ごす。
そう考えると、自然と背筋が伸びた。
門をくぐると、周囲には同じ新入生たちが集まっていた。
「王都出身の方々かな。」
ノアは周囲を見回す。
身につけている服。
持っている装備。
立ち振る舞い。
どれも自分とは違って見える。
「ねえ、あの人……。」
「今年の首席候補じゃない?」
「魔力量がすごいらしいよ。」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
名前の知られた家の子息。
幼い頃から魔法教育を受けてきた者。
騎士団を目指して鍛えられた者。
ここにいる全員が、それぞれの道で努力してきた人間なのだ。
ノアは少しだけ笑う。
「すごいな……。」
不思議と悔しさはなかった。
むしろ、嬉しかった。
自分が知らない強者がいる。
それは、もっと強くなれる可能性があるということだから。
その時。
「おい、君。」
横から声をかけられた。
振り返ると、同年代の少年が立っていた。
整えられた金髪。
高価そうな制服。
そして、隙のない立ち姿。
貴族だと一目で分かる。
「君も新入生か?」
「はい。」
ノアが答えると、少年は頷いた。
「なら、同じ学年だな。」
特別親しげというわけではない。
だが、礼儀正しい。
「俺は――」
少年が名乗ろうとした、その時。
学園内へ鐘の音が響いた。
――ゴーン。
新入生集合の合図。
「あ、始まるみたいですね。」
ノアが言うと、少年も視線を校舎へ向ける。
「そうだな。」
その少年は、人の流れの中へ消えていった。
ノアはその背中を少しだけ見つめる。
強い。
直感的にそう感じた。
魔力の大きさではない。
立ち姿。
目線。
歩き方。
全てに隙がない。
――この学園には、こういう人間がいるのか。
ノアは小さく気を引き締める。
そして大講堂へ向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
同じ頃。
大講堂の前には、ひときわ人を集める少女がいた。
美しい栗色の髪。
澄んだ青い瞳。
気品ある佇まい。
周囲の視線を集めることを、本人は気にしていない。
少女の名前は――
リリア・ローゼンベルク。
中級貴族ローゼンベルク家の長女。
今年の新入生代表。
王立ルミナス学園でも、間違いなく注目される存在だった。
しかし。
彼女が気にしているのは周囲の視線ではない。
人の流れの中。
ただ一人を探していた。
「……どこにいるの。」
小さく呟く。
十年。
ずっと待っていた。
あの日、自分を救ってくれた少年。
ノア・アークライト。
「お願い……。」
リリアは胸元へ手を添える。
そこには、幼い頃から大切にしてきた小さな押し花があった。
「今度は、私が見つけるから。」
その瞳には、確かな決意が宿っていた。




