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神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
森の約束

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2/11

森の約束-02

 少女は怯えた小動物のように、ノアをじっと見つめていた。

 泣き止もうとしているのだろう。

 何度も袖で涙をぬぐうけれど、新しい涙がぽろぽろとこぼれてしまう。

 ノアはそれ以上近づかなかった。

 急に近寄れば、きっと怖がらせてしまう。

 父からも教わっていた。

『困っている人ほど、安心させてやれ。急かすな。相手の歩幅に合わせるんだ』

 だからノアは、その場にしゃがみ込んで優しく微笑んだ。


「僕はノア。君は?」


 少女は口を開きかけて、また閉じる。

 知らない男の子に名前を教えていいのか迷っているようだった。

 少しの沈黙のあと、小さな声が返ってくる。


「……リリア。」

「リリアちゃんか。かわいい名前だね。」


 その一言に、少女は少しだけ目を丸くした。

 名前を褒められたことが、少し嬉しかったのかもしれない。


「迷子?」


 こくり、と小さく頷く。


「お父さんとお母さんは?」

「……わからない。」


 また涙があふれそうになる。

 ノアは慌てて話題を変えた。


「お腹、空いてない?」


 その瞬間。


「……ぐぅ。」


 森の静けさに、小さなお腹の音が響いた。

 リリアは顔を真っ赤にして両手でお腹を押さえる。


「あ……。」


 恥ずかしそうに俯く姿に、ノアは思わず笑ってしまった。


「あ、ごめんね。笑ったんじゃなくて……僕もお腹空いてたから。」


 そう言うと、背負っていた小さな袋を下ろし、中から布に包まれた昼食を取り出す。

 母が朝早く作ってくれたサンドイッチだった。

 ノアは迷うことなく包みを開き、半分をリリアへ差し出す。


「はい。」


 リリアは驚いたように目を見開く。


「……でも。」

「一人で食べるより、二人で食べた方がおいしいから。」

「でも……。」

「母さんがね、『困っている人がいたら助けなさい』って。」


 少し照れくさそうに笑うノアを見て、リリアは恐る恐るサンドイッチを受け取った。


「……ありがとう。」


 その声は、さっきより少しだけ明るかった。

 二人は大きな木の根元に並んで腰を下ろす。

 しばらく無言で食べていると、リリアが小さく呟いた。


「……おいしい。」

「母さんの料理は世界一なんだ。」


 どこか誇らしげに胸を張るノアに、リリアはくすっと笑う。

 その笑顔を見たノアも、つられるように笑った。

 森の中に、さっきまでの泣き声はもうなかった。

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