表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
神枷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/15

神枷-04

「……ならば。」

「お前には、資格がある。」


 その言葉とともに、白い世界の足元へ、幾重もの光の輪が広がっていく。

 静かだった空間に、初めて波紋のような揺らぎが生まれた。

 ノアは驚いたように辺りを見回す。


「これ……。」


 人影は一歩だけ前へ出る。

 その姿は相変わらず光に包まれ、顔は見えない。

 だが、その声だけは、先ほどまでよりも少しだけ近く感じられた。


「願いは、対価なく叶うことはない。」


 ノアは黙って聞いている。


「世界は等しく在る。」

「得る者は、失う。」

「救う者は、背負う。」

「それが理だ。」


 静かな言葉が、一つひとつ胸へ落ちていく。


「少年。」

「お前は少女を救うことができる。」


 ノアの瞳が大きく開く。


「本当に……?」

「だが。」


 その一言で、空気が変わった。


「代償を負う。」


 ノアは小さく息を呑む。


「代償……?」

「お前は枷を背負う。」


 白い世界のどこからともなく、小さな光が集まり始める。

 それらは鎖のように連なり、ノアの周囲を静かに巡っていた。


「その名は――神枷(しんか)。」


 その名が告げられた瞬間、光の鎖が淡く輝く。


「神が与える枷ではない。」

「お前自身が、お前に課す枷だ。」


 ノアはその言葉の意味を考える。

 しかし、六歳の少年には、まだ理解しきれない。

 人影は続ける。


「この枷を受け入れた瞬間、お前は弱くなる。」

「誰よりも。」


 ノアは眉を寄せた。


「弱く……?」

「魔力は底へ沈む。」

「力は封じられる。」

「人はお前を無能と呼ぶ。」

「努力しても、報われぬ日々を歩む。」


 ノアは静かに聞いていた。


「戦えば敗れる。」

「笑われる。」

「蔑まれる。」

「才能なき者と見下される。」

「それでも。」

「お前は、その枷を外せない。」


 白い鎖が、ゆっくりとノアの周囲を巡る。


「ただし。」


 人影は初めて、少しだけ声を和らげた。


「お前が命を懸けて守ろうとする者が、本当に命の淵へ立った時。」

「その瞬間だけ。」

「神枷は解かれる。」


 鎖が一瞬だけほどけ、眩い光となって広がる。

 ほんの一瞬だけ。

 世界そのものが息を呑んだようだった。


「だが、それも一時。」

「守り終えれば、再び枷は閉じる。」


 ノアは光の鎖を見つめる。

 それは恐ろしいはずなのに、不思議と嫌な感じはしなかった。

 まるで、「誰かを守る」という願いそのものが形になったように見えた。

 人影は最後に問う。


「この道は、長い。」

「孤独でもある。」

「それでも、お前は歩むか。」


 ノアは少しだけ俯く。

 難しいことは分からない。

 未来がどうなるかも分からない。


 でも、一つだけ分かることがあった。

 リリアを助けたい。

 その気持ちは、さっきから一度も変わっていない。


 ノアはゆっくりと顔を上げる。

 そして、小さく、しかし迷いなく頷いた。


「うん。」

「僕が歩く。」


 その答えに、白い鎖が静かに輝きを増した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ