表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
神枷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/15

神枷-01

 ……あれ。

 ゆっくりと、ノアは目を開いた。

 眩しい。

 どこまでも白い光が広がっている。

 空もない。

 地面もない。

 雲もない。

 それなのに、不思議と落ちている感覚もなかった。


「……ここ、どこ?」


 返事はない。

 風の音も。

 鳥の声も。

 自分の呼吸さえ聞こえない。

 世界から音だけが、きれいに消えてしまったようだった。

 ノアはゆっくりと立ち上がる。

 足元を見ても、白しかない。

 一歩踏み出す。

 確かに歩いているはずなのに、足音は響かなかった。


「リリア?」


 呼んでみる。

 返事はない。


「リリア!」


 少しだけ大きな声を出す。

 それでも、何も返ってこない。

 胸の奥が急に苦しくなった。


「リリア……?」


 走り出す。

 どこへ向かえばいいのかも分からない。

 それでも走る。

 白い世界には目印が何ひとつない。

 右へ行っても。

 左へ行っても。

 前へ進んでも。

 景色は何一つ変わらない。


「リリア!」


 何度も名前を呼ぶ。

 返事はない。

 立ち止まり、辺りを見回す。

 白。

 ただ白。

 その時だった。

 ふと、自分の手を見る。

 傷がない。

 さっきまで木剣を握っていた手も。

 転んで擦りむいた膝も。

 どこにも傷一つ残っていなかった。


「……あれ?」


 ノアは自分の胸に触れる。

 痛くない。

 苦しくもない。

 あの黒い獣は。

 リリアは。

 最後に見たのは――。


「……っ!」


 思い出した瞬間、ノアの表情が青ざめる。

 大きな爪。

 振り下ろされる影。

 自分はリリアを抱きしめて――。


「リリア!」


 ノアはもう一度叫んだ。

 今度は泣きそうな声だった。


「返事して!」

「お願いだから……!」


 その小さな願いだけが、音のない世界へ溶けていく。

 どれほど走ったのだろう。

 時間の感覚さえ曖昧になった頃。

 ふいに、ノアは足を止めた。


 目の前に、誰かが立っていた。

 いつから、そこにいたのか分からない。

 白い衣をまとった、人影。

 輪郭はぼんやりと揺らぎ、逆光のような光に包まれているせいで、顔は見えない。

 男なのか。

 女なのか。

 大人なのか。

 子どもなのか。

 それすら分からない。

 ただ一つだけ。

 その存在が、この白い世界そのものと同じくらい静かで、そして圧倒的だった。


 ノアは思わず息を呑む。

 人影は何も言わない。

 ただ、まっすぐノアを見つめていた。

 やがて――。

 音のないはずの世界で、初めて声が響く。


「少年。」


 その一言だけが、不思議なほど鮮明に、ノアの胸へと届いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ