第7話 白い追っ手
走りながら、数を数えていた。
背後の斜面に四つ。左の尾根の上に、ひとつ。
足音が揃っている。歩幅がひとつも乱れない。この森でそんな歩き方をする者は、一種類しかいない。
白狼族の、狩り隊。
そして、あの足音が追っているのは、わたしではなかった。
腕のなかで、青い髪の頭が、こつん、と胸に当たった。
「……シズちゃん」
「しゃべるな。舌を噛む」
「……うん」
ハルカだった。
昨日はじめて目を覚まして、まだ水しか口にしていない。自分の足では、立てない。
この子が、狩られている。
わたしに守れるのは、この腕の幅だけだった。
沢を飛び越え、斜面をひとつ登った。
ざ、と右の尾根で葉が鳴った。
……先回りされた。
前に二。左後方に二。斜面の上の段に、一。
……五。
わたしひとりなら、抜けられる。抜けられないのは、腕のなかがあるからだった。
「……シズちゃん。こわく、ないよ」
嘘に決まっていた。声のいちばん奥がかすれていた。
それでもこの子は「こわい」より先に「こわくない」を選んで、口に出した。
斜面の中腹まで戻って、いちばん太い樹の根方にハルカを降ろした。
右手は倒木がふさいでいる。左は下りの斜面。背中は、この樹。
「ここに、いろ。動くな。声も、出すな」
ハルカはこくりと頷いて、両手で自分の口をそっとふさいだ。
わたしは立ち上がって、刀の柄に手をかけた。
樹から、三歩。
三歩より外へは、出られない。出た瞬間に、誰かがここへ入る。
……この三歩のなかだけで、五人を止める。
最初に出てきたのは、二人だった。白い衣。腰には、父上の紋章。
二人は左右にひらいて、樹の脇を回りこもうとした。
わたしは左へ半歩。峰で内側の一人の肘を弾き、返す動きで右の一人の胸を柄頭で押し戻した。
二人とも、下がった。
追わなかった。追えなかった。
……そうか。
この二人は、わたしを斬りに来ていない。わたしを、樹から引き剥がしに来ている。
白狼族の狩りは、獲物を殺さない。追い立てて、囲って、疲れさせて、最後に獲る。父上に、いちばん最初に教わった型だった。
斜面の下で、白い外套がひとつ、ゆっくり前に出た。狩り隊の長だ。稽古場で何度も背中を見ている、背の高い女の戦士だった。
「シズ様。あなたを討てとは、言われておりません。その娘だけです」
「……できない」
「命令です」
「わかっている。……わかったうえで、動かない」
長は、それきり何も言わずに右手を上げた。
……父上の教え通りに、父上の弟子たちが、父上の娘を囲んでいる。
右の倒木を、大きな影が踏み越えてきた。両手に、木こりが使うような幅広の斧。
ぶうんっ。
横薙ぎが来た。よけるだけなら簡単だった。だが、よけた先に樹がある。
だから、よけない。
半歩だけ前へ出て、斧の柄の根元へ体を入れた。刃はわたしの背中のはるか外を通り抜けた。
ずしん。
斧が、幹に食いこんだ。その柄を、わたしは踏んだ。
大男が引き抜こうとして、つんのめる。跳ね上がった自分の斧の柄が、その顎に、ごつん、と当たった。
峰で首の後ろを一度。どうっ、と落ち葉が散った。
一人。
あとの二人は、休ませてくれなかった。
左袖が掴まれた。ぐっ、と体が引かれる。引かれた先は——樹から、離れるほうだった。
……やはり、これだ。
逆らわず、引かれる力に乗って前へ飛びこんだ。あごの下に掌の付け根を当てて、ほんの少しだけ押し上げる。
白い目が、ぐらりと揺れた。
同時に、正面から細い剣が二本きた。一本を受けた瞬間、遅れて二本目が下から来る。そういう剣だ。
跳ね上げず、そのまま滑らせた。空いた左手の指で、二本目の手首を弾く。落ちた剣を爪先で蹴り上げると、柄が本人の額に、こつん、と当たった。
三人。
息が上がっていた。膝が、すこし笑っていた。
三歩の内側は、まだ守れている。
ひゅっ。
風のなかを、細いものが横切った。
矢だ。
斜面の上の段。雑木の切れ目に、弓を構えた白い影があった。
狙いは、わたしではなかった。
樹の根方。青い頭のほうだった。
「——!」
三歩。三歩が、こんなにも遠い。
斜面を横切る時間より、矢のほうがずっと速い。
——間に合わない。
そう思った、その瞬間だった。
左の胸のいちばん奥で、ことん、と、なにかが座りなおした。
あの夜、女神様が最後に置いていった音だった。
『いつかあなたが、本当に守りたいものの前に立つとき——その力の本当の意味がわかります』
……いま、だ。
——動いてくれ。
わたしは生まれてはじめて、そう願った。
音が、伸びた。
落ち葉を踏む自分の足音が、ずうう、と長く尾を引いた。木の葉が一枚、目の高さでゆっくり落ちていく。
そのなかで、わたしの心臓だけが、はやかった。
矢尻の縁に朝の光が乗っていて、その光の粒が少しずつ前へずれていくところまで、見えた。
……見える。
ぜんぶ、見える。
わたしは地を蹴った。斜面の土が、ゆっくりと後ろへ剥がれていった。
矢に、追いついた。
矢を、追い越した。
樹の根方に、青い髪があった。ハルカは両手で口をふさいだまま、目だけを大きく開けていた。まばたきの途中だった。瞼が、まだ半分までしか下りていなかった。
わたしは、その前に立った。
右の掌を、ひらいた。
ごうっ、と音が一度に戻ってきた。
どんっ。
指のあいだで、矢が止まっていた。鏃の先が掌の肉を裂いて、血が手首のほうへ細く走った。
ぽたり。
ひと粒が、ハルカの頬に落ちた。
ハルカは、悲鳴を上げなかった。両手で口をふさいだまま、目だけをわたしのほうへまっすぐ上げていた。
……声を出すな、とわたしが言ったからだ。
この子はいま、それを守っている。
立った瞬間、膝が笑った。
胸のいちばん奥で、なにかが乾いた音を立てて、小さく砕けた気がした。
……使いすぎた。
なぜか、そうわかった。息がうまく入ってこない。
上の段で、白い影がもう一本、矢をつがえた。
もう一度は、使えない。
わたしは幹に食いこんだままの斧へ、左手を伸ばした。柄を引き抜いた。
重い。腕が、ぶれた。
構わずに、投げた。
斧は回りながら斜面を上って、弓の上端に当たった。
ばきん。
弦が、跳ねて切れた。
弓の戦士が切れた弦を握ったまま足を滑らせて、白い塊が斜面をずるずると落ちていった。
四人。
斜面の下で、長が待っていた。
四人が倒れるあいだ、ずっとそこに立って、わたしの手だけを見ていた。
「そこを、どいてください」
「……できない」
最初の一手は、わたしから出した。峰を返して、首筋へ。
がきん。
止められた。返した瞬間の手首の角度を、読まれていた。
二の手も、三の手も、同じところで止まった。長の剣は、わたしの峰打ちが通る道だけを、正確にふさいでいた。
……そうだ。
この人は、わたしが木刀を持った日から、わたしの手を見ている。
「シズ様。峰では、わたしは倒れません」
「……知っている」
「では、刃を返してください」
「……返さない」
「……」
「返さない」
息が切れていた。次は、たぶん間に合わない。
だから。
わたしは、刀を捨てた。
かららん、と、刃が斜面の石を打った。
長の目が、はじめて揺れた。
「——な」
白狼族の戦士は、刀を離さない。父上がいちばん最初に教える掟だ。
わたしはそれを、いま、捨てた。
懐へ入った。
どすっ。
掌の付け根が、鳩尾に入った。
長の体がゆっくり折れて、剣が指からこぼれ落ちた。わたしは倒れかけたその肩を、両手で受け止めた。
「……いまの手は。族長の教えには、ありません」
「……ああ」
「……」
「もう、ちがう」
長はしばらくわたしの顔を見て、それから樹の根方のほうへ目を移した。
青い髪のちいさな頭が、こちらをじっと見ていた。
「……あの娘は」
「悪くない」
長は、目を閉じた。
「……見失った、と。族長には、そう報告いたします」
「——」
わたしは、答えられなかった。
「二度目は、ありません。北へは、お戻りにならぬよう」
それきり、長の体から力が抜けた。
わたしはその体を、落ち葉のうえにそっと横たえた。
五人。
だれも、殺していない。
刀を拾おうとして、手が届かなかった。片膝が、地についた。
視界の隅で、ちいさな青いかたまりが動いた。
ハルカだった。樹の根元から両手を地面についたまま、少しずつこちらへ這うように寄ってきている。
「シズちゃん!」
「こら。無理に、動く——」
伸ばした自分の手のほうがふるえていることに、遅れて気がついた。
ハルカはわたしの右手を見つけて、両手でそっと下から包んだ。
「ち、でてる」
「かすり傷だ」
「かすってない」
「……かすっている」
「かすってないもん」
ハルカは自分の袖の先を口で噛んで、びりっと裂いた。細い布になった。
それを、わたしの掌にぐるぐる巻いた。ずいぶん下手だった。結び目が、指の付け根のいちばん動くところに来ていた。
「……ここに結ぶと、握れない」
「……あ」
「……まあ、いい」
「シズちゃん。シズちゃんが、ひかってみえた」
わたしは、顔を上げた。
「白いひとたち、みんな、水のなかにしずむみたいに、ゆっくりだった」
……あの一瞬は、わたしの内側だけの出来事だったはずだ。
それをなぜ、この子が言い当てられるのか。
「……そうか」
「シズちゃん、かっこよかった」
喉が、詰まった。返す言葉が、ひとつも出てこなかった。
ぐ〜〜〜〜っ。
ちいさな、でもとても正直な音が、ハルカのお腹のあたりから鳴った。
「……あ」
「……」
「……ごめんなさい」
わたしは、深く息を吐いた。
「……あとで、食わせる」
「うん!」
視界の端で、光の粒が、ふっと震えた。
なにもない空間に、小さな四角い光が浮かんだ。
「シズちゃん、なにか、みえてる?」
「……たぶん、な」
ハルカが首をかしげた。なにも見えていない目だった。
光のなかに、文字が結ばれていった。
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名前:シズ
年齢:13
LV:30
HP:520 / 780
MP:140 / 300
メインジョブ:白狼族戦士
サブジョブ:---
スキル:
✦ 【剣術・練】
✦ 【体術・練】
✦ 【気配察知】
✦ 【時間遅延】(習得・意志発動可・消耗大)
✦ 【???】(解放条件:???)
状態:疲労(重度)
装備:白狼族の外套・刀
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……流れ者が酒場で言っていた、己の力を視ることのできるまぼろしの窓か。父上は戯言だと一蹴していた。
「なんて、書いてある?」
「……わたしのなかの力を視られる窓、らしい。名前、シズ。LV、30」
「……エルブイ」
ハルカがその音をなぞって、しばらく黙った。
「……あ。ゲームの、ステータスみたい。LVは、レベル。つよさの、めもり」
「げーむ、とは」
「じかんちえん、とか、ない?」
わたしは、息を止めた。
「……ある」
「うわ、すごいやつだ! しょうもうだい、って、かいてる?」
「……書いてある」
「じゃあ、たくさん、つかっちゃだめ」
……胸の奥が乾いた音を立てたのを、この子は見てもいないのに言い当てている。
「なぜ、知っている」
「わからん」
ハルカは、こともなげに言った。
「しってるけど、おもいだせない」
……この子は、なにかを内側に持ったまま、ここに来ている。
窓の横で、光の粒がもう一度ふるえた。二枚目が、ぽう、と灯った。
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名前:ハルカ
年齢:15
LV:2
HP:120 / 120
MP:80 / 80
メインジョブ:旅人
サブジョブ:---
スキル:
✦ 【女神の加護】
✦ 【再生力】
✦ 【格闘術・極】
✦ 【見切り】
✦ 【???】(解放条件:???)
状態:正常
装備:旅装束
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「……お前のものまで、見える」
「なんで?」
「わからん」
「シズちゃんも、わからん」
わたしは声に出して、上から順に読んでやった。ハルカは目を閉じて聞いていた。
「みきり、って、なに?」
「……わたしにも、わからん」
「そう」
ハルカはそれ以上訊かなかった。ただ「みきり」という音を、口のなかにいちど載せてみたかっただけらしかった。
「シズちゃん。ねんれいのとこ、じゅうさん、って、いった」
「……ああ」
「……じゃあ、シズちゃん、わたしより……」
ハルカの視線が、そろそろ、と隣の窓のほうへ滑った。見えていないのに、滑った。
「わたし、じゅうご……? え、ええぇ!?」
ハルカが両手で、自分の頬を、ぱふっと押さえた。
「わたしのほうが、としうえ!?」
「……そうなる」
「うそだぁ……」
——女神様は、こういうかたちで、この子とわたしを並べたのだな。
やがてハルカが、ぐっと背筋を伸ばした。伸ばしたはずみで前へ倒れかけて、慌てて根に手をついた。
「……おねえさん、だ」
「いま、転びかけたぞ」
「おねえさんは、ころびかけても、おねえさん!」
「……あれ。に、の、まま。レベル、2」
ハルカが、ぱちぱちとまばたきをした。
「あんなに、たくさん、たおしたのに」
膝のうえで、ちいさな拳がぎゅっと握られた。
「たてのかべ、こえたよ。おおきい、おのの、ひとも、なげたよ」
指を折って数えて、その手が、途中で止まった。
ハルカは黙った。まばたきが、ゆっくりになった。
「……あ」
「……なんだ」
「もしかして。さいごに、まけたから、かな」
わたしは、なにも言えなかった。ちがうとも、そうだとも。
ハルカはしばらく自分の掌を見て、それから顔を上げた。
「シズちゃん。まず、しっかり、つよくなろう! レベル、あげる。じゅう、くらいまで!」
目のなかで、火が燃えていた。
「……なんのために」
訊いてから、しまった、と思った。この子はまだ、この世界に行き先をひとつも持っていない。
だがハルカは、まっすぐ答えた。
「シズちゃんの、ごしんゆうさん。たすけに、いくんでしょ」
わたしの背筋が、ふっと伸びた。
昨日、たった一言だけ話した。似ていたから助けた、と。それだけだ。
「……名は、ルナ、という」
「ルナちゃん」
ハルカがその音を、口のなかでころがした。
「じゃあ、いっしょに、たすけにいこう」
いっしょに、という音の置き方が、あまりにも軽かった。荷物をひとつ持ちますよ、というくらいの軽さだった。
「……お前は、まだ立てない」
「たつよ。あしたには、たつ」
ハルカが、ふいにこちらへ身を乗り出した。
「シズちゃんは、もう、じゅうぶん、つよい」
「……そんなことは」
「あるの」
言い切られた。
「だから、つよくなるのは、わたしが、やる」
ハルカはちいさな胸を、ぽん、と叩いた。叩いてから、少し咳きこんだ。
「わたしが、レベル、あげる。それが、わたしの、たんとう」
「……たんとう」
「うん。それでね。シズちゃんは——」
そこで、言葉が止まった。
なにかうまく並べられないものを、口のなかで探している顔だった。
やがてハルカは、探すのをやめた。
「シズちゃん、あのね」
声が、すこし大きくなった。
「いのちって、だいじなんだよ」
……いのち。
「いっかい、しかない。いっかいの、いのちを、たのしく、すごさないと」
息が、足りていなかった。
「……もったいなく、ない!?」
言葉が途中で何度もつかえた。それでもこの子は止まらなかった。つかえたところを飛ばして、そのまま前へ押していった。
「シズちゃんは、もっと、もっと、いのちを、たのしんで、いいと、おもう!」
「……」
「シズちゃん、じゅうさんさいだよ! じゅうさんさいは、もっと、あまえていいの!」
甘える。
その言葉を、わたしは口のなかで転がしてみた。
どこにも、噛むところがなかった。
「それに」
ハルカが、さらに身を乗り出した。
「ルナちゃんを、たすけたら」
「……ああ」
「もっと、ルナちゃんと、たのしく、はなせるように、なってた、ほうが」
ぐっ、と拳を握った。
「いいと、おもわない!?」
風が、ひとつ抜けた。
……たのしく、話す。ルナと。
あの子と最後に交わした言葉を、わたしはよく覚えている。川辺で、十歩離れていろ、と言った。それだけだ。
その次の日に、あの子はいなくなった。
「シズちゃんの、はなしかた」
ハルカが、鼻の頭に皺を寄せた。
「なんかね。こう。……かたい。もっと、こう、〜だよ、とか。いってみて?」
わたしはハルカを見た。ハルカは、まっすぐわたしを見ていた。
口を、ひらいた。
「……〜だ、よ」
「もう〜! 真顔!」
「真顔じゃ、ない」
「まがおだった! いま、ぜったい、まがおだった!」
黒い耳が、勝手に、ぱたっと伏せた。
……この耳は、いつもわたしより先に返事をする。
「シズちゃんが、はなしかた。わたしが、レベル」
ハルカが、指を二本立てた。
「おたがい、がんばろう!」
命を楽しむ。甘える。柔らかく話す。
どれも、わたしの十三年のどこにも置き場のない言葉だった。父上の稽古場にも、里の掟にも、そんな棚はひとつもない。
「……わからん」
わたしは、正直にそう言った。
「うん。いまは、わからなくて、いいよ」
「……いいのか」
「うん。おねえさんだから、まってあげる」
「シズちゃん。やくそく、しよう。いっしょに、つよくなるって。じゅう、まで」
ハルカがちいさな手を差し出した。小指を、ぴん、と伸ばして。
わたしはそろりと手を伸ばした。布を巻いた右手ではなく、左手を出した。
指の先が、ハルカの指の先に、ちょん、と触れた。
あたたかかった。
「やくそく」
「……ああ、約束、だ」
「だ、よ」
「……約束、だ、よ」
「できた!」
ハルカが両手を挙げた。挙げたはずみで、また倒れかけた。
わたしは、その肩を受け止めた。
斜面のあちこちで、白い外套が転がっていた。
誰も、死んでいない。
……ルナ。いま、まっててくれ。
この子と、いっしょに行く。
——たのしく、はなせるように。
黒い尻尾が、勝手に、ふわりとひとつ、揺れた。
「あ。しっぽ、うごいた」
「動いていない」
「うごいた」
「……動かん」
「うごいた〜」
わたしは立ち上がって、刀を拾った。
三歩、外へ出た。
もう、誰も入ってこなかった。




