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求め行く者  作者: 祓川雄次


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1998年8月15日(土) (4)

(四)

 一五時一八分……。

 カルロス・ゴンザレスは、日本という小さな島国の玄関口の一つである成田空港へと姿を現した。

 報道陣の数台のカメラが、その姿を捕らえる。彼は今回が二度目の来日となる。

 日本を訪れる海外ボクサーたちは、日本は良い国で、また来たいという台詞を残す者が多い。たまに家族を連れてくるボクサーもいるので、日本人選手を下に見ているのでは、と言われることもある。

 ただゴンザレスは、そんなボクサーたちとは異なり、違う決意で日本へと来ることができた事をある種、嬉しく思っていた。

 WBAライト級チャンピオンとして防衛を重ね、華麗なボクシングスタイルからついた別名はアーティスティック……芸術である。

 数多くの名ボクサーを排出してきたライト級は、中量級ではスピート、パンチ力など総合的な要素を要求されると言われる。

 そんな階級で、ゴンザレスは連続防衛記録を一二回と更新、継続している。このままいけばロベルト・デュラン(パナマ)の持つ黄金のライトという呼び名を引き継ぐかもしれないまで言われる逸材である。

 日本はホームタウン・デシジョン、いわゆる地元判定があるなどと言われ、倒さなければ勝てないなどと言われる事がある。しかし報道陣、宿泊施設、ボクシングファンたちは、そんな判定とは異なり、決して彼らを邪険には扱わない。だからこそ日本に来るボクサーたちは日本にまた来たいという。そこにはボクシングのみではなく、観光という意味も含まれている。

 しかしゴンザレスに取っての楽しみというのは、前回、自分の評価を下げた試合を覆す事ができる可能性が生まれたということの方が大きかった。

 前回とは異なり、スーツ姿ではなく、ジャージで来日したことも、それを物語っていた。すぐに戦闘態勢を取ることができる。そんな思いであろう。表情も厳しく引き締まり、どうにか勝った前回と同じミスをしないという決意が、有り有りと眼光から感じられる。

 そんな表情を報道陣たちはカメラのシャッターを切り、フィルムへと収めていく。そのカメラに向かい、彼は拳を高々と上げ、勝利を全身でアピールした。

 彼の誇り、ボクサーとしてではなく、一個人としての意地がそこには見受けられた。


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