第6ラウンド
(第六ラウンド)
このラウンドが始まり、国松の動きは、回を追い更に良くなっているように思えた。やっと温まってきた。そんな感じを受けなくもないが、世界タイトルマッチで、しかも押され気味に試合を進められている状況の中で、そんな余裕を見せることなどは考えられなかった。だが橘は何故かそんな思案を頭に浮かばせるのである。
インファイトの国松のパンチが、今日は全て長距離砲へと変化している。距離を掴みかけているのか、それがゴンザレスに対して少しずつプレッシャーになっているような気がする。だからなのかゴンザレスの動きが今までと変わり、避けるというよりも、逃げるというような動きに見えなくもない。
だがゴンザレスは無理をしないようにして、避けては時折サイドへと動き、フック、アッパーというパンチを打ち込んでいく。しかしヒット数は完全に国松の方が上であった。ジャブがビシビシと決まり、少しでもゴンザレスが下がるような事があれば、右ストレートをヒットさせていく。それと共に会場には歓声が起こった。
ホームでの試合はこれがかなり有効である。ジャッジがどちらに付けて良いのかわかりにくいラウンドの時に、声援が多くあったほうを取ってしまうことは多々ある。だから勝手にホームタウン・デシジョンというものは起きてくるのかもしれない。だが確実にヒット数を見ても国松のラウンドになったと橘は考えていた。




