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求め行く者  作者: 祓川雄次


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28/32

1998年8月20日(木) (3)

(三)

 セミファイナルまでの選手たちの計量は全て終了していた。後は計量会場にいる二人の選手のみであった。

 一四時になり記者やテレビカメラがいる中で計量ははじまった。

「それではWBA世界ライト級タイトルマッチの計量をはじめさせていただきます」

職員の言葉に明日の試合を放送するテレビ局や報道陣は、改めて緊張をしている様子であった。特にテレビ局としては、二人が計量をクリアしてくれないと、放送に支障がでるかもしれないと、気が気ではなかった。

 はじめに体重計に乗るのは、チャンピオンのゴンザレスであった。細身に見える身体には、パワーと切れが含まれている。足を使うボクサーというイメージ通りに、ふくらはぎの筋肉が半端ではないくらいに盛り上がっている。この足は攻撃をさばくフットワークに使われるだけではない。パンチの発射台としても威力を発揮するのである。

 ゴンザレスは計量に不安はなかった。何度となくホテルでもチェックをしてきたので、秤に乗るとすぐに両手を高々と上げて見せる。しっかりとリミット内に体重が入っていることがカメラの前で証明された。そのカメラに向かいガッツポーズを作ってみる。チャンピオンとしての余裕、そんなものを報道陣たちも感じていた。これで前回の屈辱を晴らすことができる。ゴンザレスは気を引き締める思いだけであった。

 その光景を目に入れずに、国松は服を脱いだ。その肉体は減量中という事もあるが、見事な物であった。鎧のような上半身は、減量を物語るように細身になっていながらも重厚さを感じさせる。特に上腕の太さは丸太のように思える。ただ肌の艶は減量の影響なのか、それほど良くは思えなかった。

 国松はゆっくりと秤へと乗った。分銅が大きく動かない事を願った。これさえ乗り越えればリングへと上がる資格を得られる。その時に少しばかり不安の表情を浮かべたのではないか、アルバニット・カーキはそんな読み取りをしていた。

「リミットいっぱいです」

 係員の言葉を聞いて国松はそのまま秤を降りた。ほっとしているというよりも、やっとこれでリングへ上がれるという事をよしと考えていた。

 その国松にゴンザレスは近寄り、握手を求めた。国松としては前回の試合を思い出しながら、その手を軽く受けた。カメラのフラッシュが焚かれる。それほど長い時間ではなく、二人の手は離された。

「グッドラック」

 ゴンザレスは国松へと呟いた。国松はその言葉に対して、何も反応をしなかった。

 二人の肉体がリングの上で熱気に包まれるまで、あと一日である。

 明日、軽量が行われた上の階で、ボクシングの殿堂と呼ばれる後楽園ホールのリングの上でどのような熱戦が繰り広げられるのか。報道陣や観客のみならず、二人に取っても楽しみであった。


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