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クリスタが1人でゲートを開けるようになった為、マシューは週末になるとクリスタが『場』で開いたゲートを通り、リッチフォース領へ行く事が多い。
時にはラフォレーゼの家で過ごす事もあるが、両親とクリスタが不在の今日はリッチフォース領にいる。
エレボス伯爵の家で開いたゲートを通り抜けてリッチフォース領へやって来たクリスタは、風に乗りリッチフォース家へと飛んで行った。
「?」
空中から見下ろす風景が……どこかおかしい。前に来た時と比べて何かが違う。
何が?と尋ねられても、これがおかしいと明確には言えないレベルだが……違和感がある。
キョロキョロ見回しながら空を飛んでいると、リッチフォースの屋敷の手前を馬で走るベンヴェヌードがいた。
「ベンヴェヌード!!」
クリスタがベンヴェヌードに追いついたのは屋敷の門の前。
「クリスタ!」
空から降りてくるクリスタを見て、ベンヴェヌードはニカッと笑った。
「その服、プリティうさぎだろ?そっくりだ!!」
確かに今のクリスタはプリティうさぎそのもの。
しかし、ベンヴェヌードがプリティうさぎを知っている事が衝撃だ。
「アニマル5…知ってるの?」
「その紙芝居を最初に書いたのはオレの曾祖父さんでさ!うちの蔵にアニマル5の物がいっぱいあるぜ!!オレは興味ねぇし、欲しかったらやるよ!」
それは…ヒューが泣いて喜びそうな。
「アニマル5が好きなのは私じゃなくて、知り合い。」
「ちなみに今はオレの親父が書いてるんだ!オレは絵も文も才能がないからさ、親父がガドリン領の領主になりたいならって兄貴に練習させてた。」
アニマル5の紙芝居を書くのはガドリン領の領主になる為の必須なのだろうか?
「おーい!マシュー!!オレとクリスタが来たぞー!!プリティうさぎだぞー!!!」
ベンヴェヌードがリッチフォースの館の門を開けながら大きな声で叫ぶと、庭で訓練をしていたマシューが目を丸くしてこっちを見た。
「お願い、プリティうさぎはやめて。」
マシューに癒やされたくてリッチフォース領まで来たが、ここでもプリティうさぎと言われると心にダメージを負ってしまう。
「クリスタ、よく来たね。ベンヴェヌード、プリティうさぎって何?」
クリスタ達の所まで柔らかい笑顔で走って来たマシューは、プリティうさぎを知らないようだ。
「プリティうさぎの話はしたくありません。」
クリスタが甘えるようにマシューの服を両手で掴むと、マシューは何かを察したかのようにクリスタの頭を撫でるように手を置いた。
プリティうさぎがクリスタのトラウマになりそうで、ヒューの事は…思い出したくもない。
「お兄様、ベンヴェヌードとはよくお会いしているのですね。」
プリティうさぎから話を反らしたいと言う思いから、クリスタは少し強引に別の話題を口にした。
「ベンヴェヌードには色々頼み事をしていてね。」
マシューはクリスタの顔を見て微笑むが、その顔はどことなく暗い。
「今、リッチフォース領は水不足が深刻なんだ。まだ隣国よりかはマシな状態ではあるんどけど、水の精霊の消滅の影響がとうとうこの国にも出始めたみたいだ。」
隣国との境界にあるリッチフォース領が、本来水の精霊のいる国であった隣国の恩恵を受けやすいがトラブルの影響を1番受けやすい。
「ガドリン領を見て回ったけど、湖が少し小さくなってた!マシューの言った通りだっ!」
リッチフォース領に隣接するガドリン領では、住人が気付かない程度に水が減っている。
今はまだ大丈夫だが、このまま減り続けてしまえば、いずれ深刻な水不足になるだろう。
マシュー達の会話から、リッチフォース領に来てからクリスタが感じた違和感は空気の乾燥なのだろうとわかった。




