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「今は魔法で凌いでいるけど、このままだとリッチフォース領は人の住める地ではなくなってしまう。」
乾いていくリッチフォース領。
干乾びていくのは土地だけではない。
精霊の消滅は人の心からも潤いを奪ってしまっているのか、マシューには民達は皆苛立っているように感じる。
「どうにかしたいけど……。」
次期領主として手を打たなければならないが、打つ手がない。
辛そうに顔を歪めるマシューを見て、クリスタも心が締め付けられる思いに駆られた。
「またあの時にみたいに水の精霊に魔力を分ける事って出来ないかな?」
ベンヴェヌードの呟きに、マシューがクリスタを見る。
「あの時クリスタとヒュドールが魔力を分けてなかったら、水不足が深刻になるのがもっと早かったと思うんだ!」
水に住まう精霊がいたあの場所で……水の住処で力を使い果たした精霊達に分け与えた魔力が、水に住まう精霊達の消滅を少しの間だけ先延ばしにしただけ。
「私の魔力はあの時よりも多いから魔力を分けるのは出来るけど…、でもヒュドールがいなきゃ水の住処には行けないわ。」
水の住処は水に携わる精霊の聖域。
四大精霊とは言え、風の精霊の洗礼を受けているクリスタには入れないのだ。
「それに、どこに行けば水に住まう精霊に会えるかわからないし、一時凌ぎにしかならないと思う。」
クリスタは精霊に魔力を分け与えれば見えるが、まだ常時精霊を見る事ができない。
仮に水に携わる精霊を見つけたとしても、それなりに影響力のない精霊だと水不足は解消されないだろう。
「一時凌ぎで良い!ヒュドールが水の精霊を蘇らせるって、オレは親友を信じてるからな!!クリスタも親友を信じろよな!」
ヒュドールを信じてる。
だから一時凌ぎで良いと言うベンヴェヌードは、ニカッと笑ってクリスタを抱き上げた。
「行こうぜ!」
「行くって、どこに?」
抱き上げたクリスタを乗ってきた馬に乗せ、ベンヴェヌードも馬に乗る。
「マシュー、オレはクリスタと先にラフォレーゼ領に行くからな。お前も後から来いよ!」
「そうか!あの湖か!!」
ベンヴェヌードの言葉に思い当たる場所があったマシューは、強い意志の光る瞳でベンヴェヌードを見た。
「頼む、ベンヴェヌード。すぐに追い付く。」
「任せとけって!」
屋敷内へと走り出すマシューを見送ると、ベンヴェヌードは馬を走らせた。
「行くぞ!」
猛スピードで走る馬の上は不安定で、ベンヴェヌードの前で横乗りしているクリスタは、怖くて目をギュッと閉じてベンヴェヌードにしがみついている。
幼い頃の、洞窟で泣いてばかりいたベンヴェヌードは、あのマシューも頼りにする程に逞しく成長しているようだ。




