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領地の広いリッチフォース領は、隣国だけでなくいくつかの領地と接している。
北部は険しい山で囲まれ、僅かに開かれた北西部分に隣国が接していた。隣国がクリスタ達の暮らすグラノ帝国に攻め入るには険しい山を越えるか、その開かれた北西部からしか道ははない。いざと言う時に対処出来るよう、領主の館はその北西部にある。
ベンヴェヌードの暮らすガドリン領はリッチフォース領の西部にあり、ラフォレーゼ領は領主の館とは少し離れた南東部だ。
ガドリン領は馬で走れば通常であれば3時間から4時間位で到着するが、ラフォレーゼ領には半日以上かかる。
そう、通常であれば。
ベンヴェヌードの馬にも、それに追い付いて並走しているマシューは馬にも身体能力強化の魔法をかけているらしく、スピードが半端ない。
ベンヴェヌードの閃きと行動力には感心するが、女の子でありお嬢様でもあるクリスタにはかなり辛い移動である。
あまりのスピードに声も魔法も出す事が出来ないクリスタは、ただ必死にベンヴェヌードにしがみつく事しか出来ない。
わずか2時間後にラフォレーゼ領にある祖父母の屋敷に到着したクリスタだったが、出迎えてくれた祖父母に挨拶もままならない状態であった。
「顔色が悪いけど、大丈夫?」
ベンヴェヌードの腕の中でぐったりしているクリスタを祖母が心配そうに見るが、見るからに大丈夫じゃないクリスタはベンヴェヌードに体を預けたままだ。
誰かに回復魔法をかけて欲しいと願いたいが、祖母を含めて、この脳筋軍団に回復魔法をかけてもらえるとは思えない。
ゲームの中ではマシューも回復魔法が使えたような覚えがあるが、リアルマシューは治癒等の魔法は苦手なようだ。
「安らぎの風。」
自分で治すしかない。
クリスタの使える魔法の中でも簡単で威力の弱い回復魔法だが、状態の悪いクリスタには下位の魔法が精一杯である。
「ベンヴェヌード、クリスタを。」
先に馬から降りたマシューがクリスタを抱えて馬から降ろす。
「もう大丈夫です。」
下位の魔法でもハイスペック当て馬令嬢クリスタの魔法は強力だ。
まだ顔色は悪いが、マシューに地に降ろしてもらったクリスタは祖父母に向かってにっこり笑った。
「お祖父様お祖母様、お久しぶりです。」
貴族令嬢としてきちんと挨拶をするクリスタに習い、ベンヴェヌードも頭を下げる。
「話はマシューから聞いてるが……、湖はまだ半分以上凍ったままなんだ。」
湖が元の状態に戻るまで10年はかかるだろうと言われていて、あれからもうすぐ4年。
このまま何もしなければ、美しい姿を取り戻すにはまだまだ年月が必要である。




