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お茶を飲み終わると、ライムにエスコートされてクリスタルドロップと言う花を見に行く事となった。
「クリスタルドロップは市場に出回る事のない希少種なんだ。ほら、これ羽織って。」
クリスタルドロップのあると言う建物に入る前に、クリスタはライムから渡されたもこもこの毛布を体に巻く。
「クリスタルドロップは極寒の地にしか咲く事が出来ない特殊な花だよ。寒いから早く出なきゃならないけど…、本当に綺麗だから楽しみにしてて。」
にこっと笑うライムにあざとさはない。
「ケルンズ様は本当に花がお好きなのですね。」
「花だけじゃないよ。木や草……植物が好きなんだ。」
ゲームでのライムの紹介文の趣味の欄に植物の栽培と書かれていたような気がする。
「もちろんクリスタも好きだけどね。」
ライムの笑顔にきゅるん☆としたあざとさが加わった。
「アリガトウゴザイマス。」
人懐っこい性格をしているが、その笑顔で隠している彼の本心をヒロインは見つける事が出来るだろうか……とも書かれていたような気がする。
しかし、クリスタはヒロインではなく当て馬令嬢だ。
「クリスタは年上好みなの?」
ライムは口を尖らせて拗ねる素振りでクリスタを見ても、クリスタはその愛らしさにキュンとするが、それだけ。
「年上好み…なのでしょうか?」
詩織の記憶のあるクリスタは肉体年齢は12歳でも、精神年齢は+詩織の年齢……アラサーでライムは中学1年生。
クリスタよりも年上で背の高いマシューやチェイサーにはそれほど感じないが、同級生で幼さの残るライムやアルトゥール相手だと小さな子供に懐かれているようでちょっと違うと感じてしまう。
もう少し成長し、視覚的にも背がクリスタよりも高くなればクリスタの意識も変わるかもしれないが。
「クリスタはやっぱりクリスタのお兄さんみたいな人が好きなの?」
ライムがクリスタルドロップの咲く建物のドアを開けた。
「お兄様みたいな……。」
それは違う。
マシューはマシューだからこそ良い。
「好みの男性のタイプを考えた事がないので、よくわかりません。」
攻略対象=萌。
ゲームやアニメのキャラクターにリアルに恋する…リア恋する友達もいたが、詩織の時から攻略対象はあくまで攻略の対象者で、恋愛対象として考えた事はなかった。
「ふーん、あっ!寒いから気を付けて。」
ライムの言葉よりも先に建物から流れ出した冷気がクリスタに触れる。
とても寒そうだ。
「クリスタルドロップはこの先だよ。」
薄暗くて凍り付きそうな空気で溢れた建物の中をしばらく進み、人工雪の積もるエリアにその花はあった。
「可愛い!」
涙型のクリスタルのような小さなナニカが雪の中からひっそりと伸びている。
「それはリトルクリスタルって呼ばれていて、クリスタルドロップの葉っぱなんだクリスタルドロップはあそこ。」
「!!」
まるでオーロラを切り取ったかのような不思議な色の花びら。
その花びら自体が発光しているのか、大きな花が淡く光る姿はとても幻想的で、その美しさは言葉にならない。
ただただ見惚れるクリスタの横顔をライムは誇らしげに笑って見ていた。




