90(また別の話)
どうして?
どうして私は1人なの?
母親でさえ遠巻きに私を見てるだけ。
前世は周りにあんなに人がいたのに。
「お前は顔だけしか可愛くない。」
そう言ったのは私の幼馴染のアインツ。
何言ってるの?顔が可愛いのは当たり前じゃない。
だってヒロインよ?
ゲームの中でだってヒロインが笑っただけでみんなの視線を独占してたのよ。
攻略対象達の誰かに、君の笑顔は僕を魅了し続ける花だって言ってたし。
笑顔?
そっか……笑顔ね。
「ねぇ、アインツ?」
「な、何だよ?」
にっこり。
「!」
私が微笑むとアインツの顔が真っ赤に染まった。
ヒロインの笑顔……最高ね。
使えるわ。
「私、お腹空いちゃった。」
コテンと首を傾げると、アインツは私に見惚れたみたい。
「あ、…ちょ、ちょっと待ってろ。」
アインツが慌ててカバンから取り出したのはアインツの昼食のおにぎり3つ。
「オレ、腹減ってないからやるよ。」
手渡されたおにぎり。
嘘つき。
本当はお腹ペコペコのくせに。
「アインツ、ありがとう。」
でもヒロインだから突き返ししないわ。
「一緒に食べよう?」
にっこり。
うふ、笑顔1つでアインツは私の虜。
「お前ら何やってんだ?」
私とアインツの姿を見つけてやって来たのは、アインツと同じく幼馴染のツヴァイ。
私を見下すように見る、その目付きが嫌い。
こいつにも私の笑顔は通用するかしら?
「ツヴァイ。」
にっこり。
「!」
こいつも顔が赤くなった。
私を見下すように見ていた目付きが見る影もない。
「アインツがおにぎりをくれたの。」
ツヴァイに見せ付けるようにアインツの腕に抱き着くと、ツヴァイはムッとした顔で私を見た。
「フィーア、これやる。」
ツヴァイの手にあるのは手作りのクッキー。
私は食べた事ないけど、ツヴァイの母親の作るクッキーはとても美味しいって聞いた事ある。
「ありがとう!」
アインツから離れてツヴァイからクッキーを受け取ると、ツヴァイは得意げに笑った。
「ツヴァイも一緒に食べよう?」
にっこり。
赤い顔で何度も頷いてる。
これでこいつも私の虜。
笑顔1つで男を虜に出来るなんて……ふふふ。
うふふ。
うふふふふ。
みんな私に夢中になれば良い!
ヒロインの笑顔は最強!
ヒロインはみんなに愛されるの!!
「フィーア。今日はオレと遊ぼうぜ!」
うふふ。
「抜け駆けすんな!フィーアはオレと遊ぶんだ!!」
ふふふふふ。
「フィーアちゃん、これあげる。」
あははは!
みんなが私に夢中よ!
「フィーア………。」
ただ1人、あの女を除いて。




