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「精霊と遊ぶ……ですか?」
母からの課題を消化するために机に向かって勉強していたクリスタに、父が精霊と遊ぼうと言った。
「クリスタが魔力を放出して周りの精霊に分け与えるんだ。そうすればクリスタにも精霊は見える。見えている状態で精霊達と触れ合えばそのうち何もしなくても見えるようになるんじゃないかと思うんだ。」
以前水に住まう精霊に魔力を与える事で見えるようになった事があったが……同じ事を風の自然精霊にするのだろうか。
「風の精霊がクリスタと遊びたいと訴えていてね。みんなクリスタが大好きだと言っていてね。癇癪を起こす前に願いを聞き入れてあげたい。」
「大好きだと言って頂けるのは光栄ですけど………。」
精霊達と遊ぶのは構わない。
でも、母からの課題が山のようにある。
物憂げな瞳で課題を見つめるクリスタを見て、父は苦笑いをした。
「テレーゼから条件付ではあるが、承諾を得ているから課題の心配はしなくてもよい。」
「条件とは、どのような条件なのですか?」
課題の心配をしなくても良いのはありがたいが、父の言う母からの条件が気にかかる。
「あまり気乗りはしないのだが……。」
父は苦悶の表情で目を閉じると溜め息を吐いた。
「クリスタを良家の令息と交流させると約束させられてしまったよ。」
「えっ?」
お見合いしろと言う事なのだろうか。
クリスタの親友のカーラにも婚約者がいるし、貴族令嬢の結婚は皆早いが……詩織の記憶のあるクリスタにとっては早過ぎると感じてしまう。
「クリスタもアイリーンも結婚などはせず、ずっと私と一緒にいてくれて構わないのだけどね。」
それはそれでどうかと思うが。
「テレーゼは君達の為に色々考えてくれているんだ。クリスタもマシューも優秀だし、聞き分けが良いからテレーゼの課題を文句1つ言わずに頑張っているが……もし、嫌だと思うならすぐにこの父に打ち明けて欲しい。」
父の大きな手がクリスタの頭を撫でた。
「テレーゼは私との結婚を本当に幸せだと感じてくれているらしい。それは私も嬉しいのだが、クリスタにも同じ幸せを味わって欲しいと言っていた。素晴らしい伴侶を見つけ、夫となる奴を支える……。」
奴の部分が妙に語気が荒かったのは気付かなかった事にしよう。
「だが、それだけでは君の才能が豊か過ぎて勿体なくてね。優秀な魔術師であるテレーゼさえも嫉妬の念すら抱けないその才を……テレーゼはもっと伸ばしてやりたいとも思っていて。色々学ばせたいと言う気持ちが課題と言う形で君にのしかかってしまっているんだ。勉強量だけで見ればクリスタの量はマシューの倍以上ある。」
マシューの倍。
マシューの量ですら多いと感じていたのに、その倍とは……。課題を終わらせるのに必死で気付かなかった。
「あれだけ難しい課題の出来るクリスタは本当に優秀だ。だからこそテレーゼも欲が出てしまうらしい。」
それは、能力を底上げされたハイスペック当て馬令嬢だから……。それが裏目に出てしまったらしいクリスタは半泣きで笑うしかない。
「魔術の優秀な者は、極端から極端に走る性格の持ち主が多過ぎる。」
父の何やら実感の籠もった呟きがクリスタの心に深く刻み込まれたのだった。




