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ゲートを開く魔法は、とても複雑で繊細。
初めてゲートを開く魔法に触れたクリスタは、近距離なら1人で開けそうだと思ったが、母のように長距離のゲートを開くにはまだまだ経験が足りないと感じた。
そんな長距離のゲートを開く魔法を扱う母は素晴らし魔法使いなんだと、クリスタは実感する。
「早いな。もう開いたんだな。」
結界の外で様子を見ていた父が母に声をかけた。
「今結界を開きますわ。」
母が父のほうへと手を伸ばすと、結界の一部が開く。
その結界の開いた所から家族全員が結界内に入ると、母が再び結界を閉じた。
「……凄い。」
母は今までクリスタの前では魔法を使う事は少なく、クリスタがその実力を見る機会がなかった。
母の巧みな魔力のコントロールに膨大な魔力量はクリスタとして転生してから出会った人の中でも1番だ。
母の魔法の強さに身体が痺れている。
「私……本当にファンタジーな世界に転生したんだ。」
今までクリスタとして生き、魔法を使っていたが、詩織として生きていた時の電化製品の延長としか思えず、クリスタにとって魔法は便利な道具でしかなかった。
しかし、今クリスタの身体が痺れるほどの母の強大な魔法に触れ、剣と魔法のファンタジーな世界に転生した事を今更ながら実感している。
「クリスタ、よく頑張りましたね。」
そうにっこりと微笑む母は、3人の子供がいるとは思えないほど若々しく美しい。
「さぁ、行こうか。」
父が差し出した手に母の手が重なり、父のエスコートで母はゲートを潜っていく。
「クリスタ。」
クリスタにはマシューの手が差し出され、クリスタもその手に自身の手を重ねた。
「そう言えばちょうど家を出る時に届いた手紙の中にベンヴェヌードからの手紙があったよ。」
「ベンヴェヌードからですか?」
「名前は私宛だが、あの手紙はクリスタへの手紙だろう。」
10歳の時に出会ったベンヴェヌードには性別と名前を偽ったままで、手紙のやり取りすらしていない。
クリスタと書いて良いのか、マシューと書くべきなのかわからず、クリスタは手紙を書く事が出来ないでいた。
「私の名前で返事を書いてもよろしいでしょうか?」
ベンヴェヌードはクリスタの親友だ。
その親友に嘘をついている事が心苦しい。
いずれ……ヒュドールにも、本当の事を話せる日が来れば良いと切に願う。
「あぁ、もちろん。次にガドリン兄弟に再会してももう私はクリスタの振りは出来ないし、二度と女装はしないからね。」
ファーストキスをヒュドールに奪われてしまったマシューは、あれから男らしくあろうと身体を鍛え、剣術だけでなく格闘技も学んでいる。
しかし、今の細マッチョなマシューが女装してもきっと麗しい美女になるだろうとクリスタは思う。
まぁ男性らしく声変わりして低くなった声ではすぐに男だとバレてしまうだろうが。
「また……お会いしたいです。私の親友なのですから。」
ベンヴェヌードにも、ヒュドールにも。
親友にはなっていないがブルーノにも。
性別を偽っていた事を、彼らが知ったら怒るだろうか。
クリスタはベンヴェヌードからの手紙を楽しみにしながら、マシューと共にゲートを潜っていった。




