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首都からゲートを通れば一瞬だが、馬車での移動距離は2週間以上必要とする場所に位置するリッチフォース辺境伯領。
周辺の国の中でも好戦的な国と隣接しているリッチフォース辺境伯領は国防の要である。
母とクリスタとで開いたゲートを抜けてまず見えたのは、踏み固められた硬そうな大地とその大地に突き刺さる木の柵だった。
「あの柵は国境だよ。」
木の柵をまじまじと眺めるクリスタにそう教えてくれたのはマシューだ。
国境など国の中心である首都にはなかった。
「本当に……。」
どこでも○アを潜ったみたいな経験が出来るなんて…と、クリスタの中の詩織が感動している。
「ここが国の最南端であり、将来マシューが領主となる我がリッチフォース領だ。」
クリスタ達の背後から聞こえた声に振り返ると、そこには見るからに逞しいおじいさんが立っていた。
「私は君達のお祖母様であるレーヌ=ラフォレーゼの兄、セフィロス=リッチフォースだ。リッチフォース領の領主をしている。」
胸に手を当てて自己紹介をしてくれる様子は、まるで騎士ようで素敵なおじい様だ。
「お目にかかれて光栄です。私はマシュー=ラフォレーゼと申します。こちらは妹のクリスタ=ラフォレーゼです。」
「よろしくお願い申し上げます。」
セフィロス=リッチフォース。
リッチフォース領主であり、マシューの養父となる人物は、礼儀正しい挨拶をする2人に柔らかい笑みを浮かべた。
どことなく祖母のレーヌを思わせる笑顔は、とても優しげに見える。
「伯父上、お久しぶりです。」
父と母、そして母のドレスのスカートの後ろに隠れたアイリーンが挨拶をする。
「ブライトもテレーゼもよく来たな。そこのお嬢さんはアイリーンだな?」
「ほら、アイリーン。挨拶をなさい。」
「アイリーン=ラフォレーゼです。よろしくお願いします。」
母に促されて挨拶をしたアイリーンは、体の大きなセフィロスに少々戸惑っているようだ。
「歓迎するぞ、アイリーン。たくさんお菓子を用意しているから、後で一緒に食べよう。」
「うん!」
セフィロスに戸惑いつつも、お菓子に釣られたアイリーンはにっこりと笑った。
「それにしても……テレーゼはまた腕を上げたな。あんなにも大きなゲートを開くとは。」
「私だけの力ではありませんわ、伯父様。クリスタのサポートがあったからこそ開けたゲートですの。クリスタなら、きっと1人でもゲートを開けるようになると思います。」
「クリスタが?それは凄い。」
「ですので、クリスタにもこの地に魔力の座標を立てることのお許しを頂きたいのです。」
魔力の座標とは、ゲートを開く時の指針……魔力を込めた血を一滴垂らす事で術者は己の魔力を辿り、正確な位置にゲートを開く事が出来る。
首都のように何年も暮らしている所であれば座標を立てなくても思い描いた場所にゲートを開く事が出来るが、あまり訪れたの事のない場所ではこの座標がなければ開く事は出来ない。
「もちろんだ。」
座標を立てる時は領主の許可を得なくてはならず、領主は許可していない座標を感知したら座標を壊す事が出来るのである。




