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「グラノ帝国第2皇子アルトゥール=アンヘル=イル=グラノリェルス殿下、及びクリスタ=ラフォレーゼ大公令嬢。ご入場!!」


アルトゥールにエスコートされ、クリスタが会場の入場口に立つと2人の名前が呼ばれた。


「行くぞ。」


「はい。」


アルトゥールの声に笑顔で返したつもりだがその笑顔は不安げで固く、緊張で萎縮する気持ちをなんとか奮い立たせなければと息を吐く。

アルトゥールの左腕に手を添えて最初の一歩を踏み出すと、そこには雅やかな世界が広がっていた。

入場口は少し高い所に位置にしているため、入場者は会場全てを見渡せ、会場にいる全ての者が入場者をはっきり見る事が出来る。


1番最後だったアルトゥールとクリスタを見る人、人、人のたくさんの人の目に注目され、やはり足が竦んでしまう。


「オレを見ろ。」


すぐ横からアルトゥールの声が聞こえた。


その声のままクリスタがアルトゥールの方に顔を向けると、いつもよりも気品溢れる笑顔でクリスタを見守るアルトゥールがいる。


「お前の横にいる男はこのオレ様だ。何があっても完璧にエスコートをしてやる。信じろ。」


クリスタの目に、そう力強く語りかけるアルトゥールと『オレ攻め』でのアルトゥールが被った。

目の前のアルトゥールは成長途中で、クリスタとの身長差は5cm位だが、『オレ攻め』での彼はマシューよりも背が高くなる。


「はい。アルを…信じます。」


メインヒーローであるアルトゥールはヒロインが転びそうになっても力強いフォローをしてくれていた。

今のアルトゥールは若干幼いが、あのアルトゥールなのだから大丈夫だと少し安心して笑みが溢れた。


「よし。」


クリスタの笑みに頷いたアルトゥールと会場に顔を向けるとアルトゥールは右手を胸に当てて一礼し、クリスタはスカートの裾をつまみ上げて頭を下げて礼をする。


会場に最後の入場者が加わると、会場が少し暗くなった。


「学園長挨拶。」


アルトゥールとクリスタが先程いた入場口がスポットライトで照らされ、厳格な顔付きの学園長が立っている。


ビシッとした燕尾服で身を包み、その風貌から真面目な挨拶をするのかと思いきや……様子がおかしい。


「チーッス!みんなのってるかーい?イェーイ!!」


無表情でゆったりと腕を振り上げる学園長にクリスタの目が点だ。

毎年の事なのか、上級生は笑わないように必死に堪えているが、厳格な表情で

「テンション上げ上げで楽しんじゃって下さーい。」

とピースサインで挨拶を〆る学園長にデビュタントである1年生はあ然としてしまっている。


「生徒会会長挨拶。」


生徒会長がゆっくりと1段高い入場口の方へ向うと思いきや階段を通り過ぎ、ダンスの為にスタンバイして待機している学校のお抱えオーケストラ楽団元へ。

生徒会役員と思われる生徒がアルトゥールとクリスタを囲った。


「オレの挨拶はなし!」

 

生徒会長の大きな声が響くと生徒会役員がアルトゥールとクリスタの周りから人を離すと、生徒会の意図を理解したアルトゥールがクリスタの腰に手を回して笑っている。


「えっ?アル?」


いきなりの事に動揺するクリスタの腰をアルトゥールが引き寄せ手を取ると、生徒会長がオーケストラに向かって指揮をし、優雅なワルツの曲が流れた。


どうやらアルトゥールとクリスタのファーストダンスが始まるらしい。

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