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会場への入場は身分が高いほど後になる。
その為、皇子であるアルトゥールとパートナーのクリスタの入場は1番最後だ。
今回の学校行事の流れは、まず学園長の挨拶で生徒会長の挨拶。
次にアルトゥールとクリスタのファーストダンスから始まるダンスタイム。
それ以降は歓談するなり軽食を食べるなりする自由時間だが、一応学校行事なのである学校行事の終了の合図である花火が打ち上げられる時間までは帰る事が出来ない。
「ファーストダンスまで時間がある。これでも食ってろ。」
入場まで時間がある為、控室で座るクリスタにアルトゥールが差し出したのは皿に乗せられたクッキーだ。
「ありがとうございます。でも、少し緊張していて……。」
クッキーを食べる気分ではない。
「緊張?珍しいな。クリスタでも緊張するのか。」
緊張して強張った表情のクリスタとは違い、アルトゥールの表情は普段通りだ。
皇族だけあって、人前に出る事に慣れているからか緊張も抵抗もないのだろう。
「実は……私、ダンスがあまり得意ではなくて。アルに恥をかかせてしまったらと思うと怖いんです。」
皇族に恥をかかせてしまうなど言語道断。
うまく踊る自信のないクリスタにとって恐怖でしかない。
「クリスタ。お前のパートナーは誰だ?」
緊張で硬直して座るクリスタの前でアルトゥールはクッキーを置いて腕を組んで立った。
「アル、です。」
成績優秀で運動神経も良いクリスタは、テスト等の成績を張り出されようがいつもすました顔で結果を見上げている。
だが、今はどうだろう。
アルトゥールを見上げるクリスタの瞳は不安で揺れていて、いつものすました顔ではない。
その庇護欲を掻き立てられるクリスタの瞳と細い肩にアルトゥールの心臓がトクンと鳴った。
「このオレ様がパートナーなんだ。そんなのいらん心配だ。」
コンコンとドアをノックする音が聞こえる。
そろそろ時間らしい。
「手を。」
アルトゥールが差し出した手にクリスタが手を重ねると、アルトゥールは力強くクリスタを引いて立たせた。
「エスコートとリードは男の役目だ。ファーストダンスでは、このオレ様が最高のリードをしてやる。クリスタが心配する事など何もない。」
自信満々に笑うアルトゥールの姿は、若干幼いながらも詩織が好きだったゲームでのアルトゥールの姿そのもの。
「行くぞ。」
「はい。」
アルトゥールに手を引かれて控室を出て会場の入場口へと向かうが、クリスタの胸に緊張は残るものの、不安は大分小さくなっていた。




