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ふかふかな椅子の馬車の中では、ブスッとした表情で窓の外を見るアルトゥールと2人っきりで並んで座っている。
ドレスアップしたクリスタも美しいが、正装で髪をいつもよりキチっとセットされたアルトゥールは、さすが『オレ攻め』のメインヒーローだけあってとてもカッコいい。
「どうした?オレの顔に何か付いてるか?」
アルトゥールの整った顔を堪能している詩織テイストなクリスタの視線に気付いたアルトゥールは、クリスタの方を見ずに口を開いた。
「それともこのオレ様のカッコ良さに気付いたのか?今更だな。」
出たよ、このオレ様が。
ラフォレーゼ家では鳴りを潜めていたこのオレ様が、2人っきりになった途端現れた。
「はい。今日の殿下はとても素敵ですわ。思わず見惚れていました。」
カッコ良さには詩織時代から気付いてはいたが、ここは大人しく肯定しておこう。
「なっ!?こ、こここのオレ様がす、素敵なのは当たり前だろう。」
いつもはクリスタにこのオレ様発言を流されていたアルトゥールは急に肯定されると焦るらしい。
「お、お前も悪くないぞ!このオレ様のパートナーに相応しい美しさだ。」
アルトゥールはクリスタを褒めるのに照れているのか、顔が赤い。
「殿下に頂いた髪飾り…似合っていますか?」
「このオレ様が選んだんだ。似合わないわけがないだろう。」
『オレ攻め』の中でのアルトゥールは、ヒロインを褒めるのにももっと余裕があるように見えたが……やはり現在中等部とゲーム時高等部の年齢と経験の差だろうか。
「綺麗な贈り物をありがとうございます。今日は精一杯殿下のパートナーとして務めさせて頂きます。」
「アル。」
「えっ?」
「今日位良いだろ?パートナーなんだから。」
アルと、殿下でもアルトゥールでもなく、クリスタに愛称で呼べと言ってる。
「アル様?」
「様はいらない。」
今日はパートナーだし、とクリスタがアル様と呼ぶと即ダメ出しをされた。
「このオレ様がアルと呼べと言っているんだ。呼べ。」
きっとこれは呼ぶまでうるさいパターンだ。
しかも会場の学校まではまだ少々距離もあるし……呼んでしまった方が静かで良い。
「わかりました、アル。私の事も今日はクリスタとお呼び下さい。」
今日はを強調したが、アルトゥールはオレ様な笑顔ではなく、嬉しそうに年相応の少年めいた顔で笑った。




