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「うわぁ!お姉様、綺麗!!」
美しく着飾ったクリスタを前に、まず声を上げたのはアイリーンだ。
「ありがとう。」
アイリーンはクリスタのキラキラと輝く銀の髪と同じ位瞳を輝かせている。
「クリスタ…本当に綺麗だよ。」
「ありがとうございます、お兄様。」
クリスタが父の手を離れてマシューの元へ向かうと、マシューの目の前でドレスのスカートを翻してくるっと1回転をした。
「よく似合ってる。」
はしゃぐクリスタは本当に愛らしく、マシューは先程リカルドに向けていた笑顔とは違って、愛情豊かに笑っている。
そんなマシューにクリスタがは嬉しそうにわらった。
「第2皇子殿下、娘をよろしくお願いします。」
「………。」
母がアルトゥールに笑顔で娘を託すが、アルトゥールからは返事がない。
「……。」
「殿下?どうされました?」
何の反応もないアルトゥールにしびれを切らしたクリスタが声をかけると、アルトゥールの身体がビクッと震えた。
「すまない。クリスタがあまりに美しくて見惚れてしまった。」
アルトゥールのクリスタ呼びに一瞬目を細めたマシューだったが、クリスタに目を奪われているアルトゥールは気付く事なくクリスタの両親へと向き直る。
「ラフォレーゼ大公。それにラフォレーゼ大公婦人。今日の事……無理を言ってしまった自覚はある。感謝している。」
そしてマシューにも向き合って頭をさげた。
「兄君も…オレが不甲斐ないばかりにすまない。本来ならク…ラフォレーゼ嬢のエスコートは兄君であったと聞く。」
皇族は権威など煩わしい諸々がある為、おいそれと頭を下げる事がない。
「殿下、頭をお上げ下さい。」
マシューが少し困ったような笑顔でアルトゥールに笑いかけた。
「たくさんの女性に追い回されて戸惑う経験は私にもあります。今回は不本意ですが、妹のパートナーの座をお譲りしましょう。」
クリスタがマシューのエスコートを楽しみにしていたように、マシューもクリスタのエスコートを楽しみにしていたのだ。
しかし、女性に追い回された経験がマシューにも身に覚えがある為、アルトゥールの受けた恐怖が痛いほどよくわかるのである。
「ですが、来年以降は自分の力でパートナーを得るようお願い申し上げます。」
来年以降は自分の力で……。
来年もクリスタのパートナーになりたかったら母親を介さずアルトゥール自身の力でマシューから奪ってみろと言うマシューからの宣戦布告でもある。
今回アルトゥールがクリスタのパートナーになれたのは、母と皇族としての身分の力だ。
「わかっている。」
これ以上みっともない真似はしたくない。
まだ少年と呼ばれる年頃ではあるが、男として、皇子として誰にも負けたくはないのだ。
「行こう。」
アルトゥールが差し出した手の上にクリスタの手が重なる。
「本日はよろしくお願い致します。」
マシューに向けたはしゃいだ、家族に向ける笑顔とは違い、アルトゥールに向けたクリスタの笑顔は少し固いが美しい。
家族に見送られながらアルトゥールが用意してくれた馬車へと乗り込んでいった。
ちなみに。
アルトゥールと共にいたはずのリカルドは、身体能力強化の魔法で全身を強化されたマシューによって一瞬にして壁際に追いやられていた。
しかもカーテンでぐるぐる巻きにされていたため、クリスタのドレス姿を見る事ができなかったのである。




