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美しいドレスを目の前に心が踊らない女性は少ないだろう。
ファーストダンスを渋っていたクリスタも、母と兄が選んでくれた白いドレスに身を包み、結い上げた銀の髪をアルトゥールからもらった髪飾りで飾ると上機嫌で鏡の前でポージングをしていた。
「綺麗だよ。さすがは私達の娘だ。」
着飾ったクリスタに鏡越しに微笑みかけた父はシャラリとクリスタの首にネックレスを回している。
「これは私から……受け取ってくれ。」
いつの間に用意してくれたのだろう。
細いキラキラと輝く銀の鎖にクリスタの瞳と同じ色の石を真珠がクリスタを飾っている。
「この石はグランディディエライトと言う。」
父の大きな手がクリスタの耳に触れるとヒヤリとした何かがクリスタの耳を挟む。
鏡を見るとネックレスとおそろいのイヤリングがクリスタの耳にある。
「グラン……ディディエライト?」
このネックレスにイヤリング……『オレ攻め』でのデビュタントのイベントでクリスタが身に着けていた物だ。
「私達の瞳と同じ色のこの石は新たなる冒険と言う意味の言葉を持つ石。本当のデビュタントになる時に贈ろうかとも考えたが、今日のクリスタは本当に美しい。すっかり1人前のレディだな。」
まだまだ子供だと思っていたのに、美しく着飾ったクリスタは大人びて見える。
「ありがとうございます。大事にします。」
嬉しそうに笑うクリスタの成長を嬉しく思う反面、将来は親の手を離れて別の男の手を取るのかと思うと無性に寂しくなるのは娘を持つ父親の宿命なのかもしれない。
「お前は私の自慢の娘だ。愛してるよ。」
屋敷内にいる風の精霊が父に来客存在を伝えた。
「殿下がお持ちだ。そこまでこの父にエスコートさせてもらえるかな?」
「はい、喜んで。」
父から差し出された手にクリスタの手が重なり、アルトゥールが来ている玄関のホールへと向かう。
ドアの外で待っていた母やすれ違うメイドや召使いからの賛美の声や視線に照れくさくなりながらも、クリスタは父のエスコートでアルトゥール元へ向かった。
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「クリスタはまだ支度をしている最中です。今しばらくお待ちください。」
恭しく頭を下げるのはクリスタの兄のマシュー。
「顔と言葉が食い違ってない?一応皇族なんだけど。」
とっとと帰れと言わんばかりの顔で不機嫌極まりないマシューに、アルトゥールにくっついてやって来たリカルドが茶化した。
「正直者なので。」
そう言ってマシューはにっこり笑ったが……なぜだろう?笑顔の方が怖い。
「で?妹のパートナーは第2皇子殿下だけなはず。どうして第1皇子殿下が?」
「い、いやぁ…、親友のマシュー君に会いたくて。」
本当は着飾ったクリスタを一目見ようと思って来たのだが、今のマシューの前でそんな事を言ったらどうなる事やら。
しかしマシューにはリカルドの考えなどお見通しで、マシューから放たれる重苦しい重圧にリカルドは押し潰されそうだ。
「あっ!第1皇子様、第2皇子様!!ようこそいらっしゃいました。アイリーン=ラフォレーゼと申します。」
冷や汗をダラダラ流すリカルドを救ったのはマシューによく似たマシューとクリスタの妹のアイリーンだった。
「はじめまして、小さなレディ。グラノ帝国の第1皇子、リカルド=ヘリオス=エル=グラノリェルスだ。よろしくね。」
「オレは第2皇子のアルトゥール=アンヘル=イル=グラノリェルス。今日は君の姉君に世話になる。」
兄のマシューとはまた違ったタイプの見目麗しい皇子様が2人も姿勢を正して挨拶をする様子にアイリーンは目を輝かせている。
「アイリーン。毒牙にかかる前に第1皇子殿下から離れなさい。」
「毒牙?第1皇子様は悪い事するの?皇子様なのに?」
「女の子にはね。だから近寄っちゃ駄目だよ。」
一国の皇子に対してかなり不敬だと思うが、まだ8歳のアイリーンにはマシューの言う事がイマイチ理解出来てないらしい。
「第1皇子様は悪い事しないよ?お姉様に綺麗なネックレスとかイヤリングをくれたもん!!」
「…………へぇ。それは知らなかったな。」
アイリーンの言葉にマシューの笑顔がより輝かしいモノになった。
「で、でもラフォレーゼ嬢には受け取ってもらえなかったから!!」
「お待たせ致しました。」
焦るリカルドの耳にクリスタの父ブライトの声が聞こえた。
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