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祝50話目!
「殿下のパートナーがクリスタになるとはね。おかげで静かになったわ。」
アルトゥールのパートナーの座を巡っての熾烈なバトルが沈静化し、日常を取り戻した教室内を見回したカーラが面白そうに言った。
「好きでパートナーになったわけじゃないわ。」
本当ならクリスタのパートナーはマシューだったはずなのに。
「でもクリスタ以外の令嬢が殿下のパートナーになってたら大変だったでしょうね。」
カーラの言うように、アルトゥールのパートナー争奪戦は中等部の権力ヒエラルキー令嬢の部抜きん出て第1位のクリスタがパートナーになったからこそ収束したのだ。
他の令嬢ではパートナーとなっても、私の方が!と名乗りを上げる令嬢がいただろう。
「それはわかってるけど。」
クリスタがアルトゥールのパートナーになれば丸く収まるのはわかっている。
でもクリスタはマシューにエスコートされたかったのだ。
「クリスタはダンスが苦手だからね。」
クリスタがマシューにエスコートされたかった理由に、尊くも麗しい兄が大好きだからと言う以外にダンスが苦手だからと言うのもある。
貴族として社交の場にダンスは必須。
クリスタは決して見苦しい程下手なわけではないが、苦手なのである。
その辺りをよく理解しているマシューは、実にスマートで優雅なリードしてくれるのだが。
「兄離れも必要よ?大丈夫。きっと殿下がリードしてくれるから。」
ほとんどの貴族はダンスは幼い頃から家で家庭教師を雇い教えてくれる為、中等部では学校の授業としてダンスを教えてくれる事はない。
高等部からはダンスをした事のない平民の騎士を目指す者や才能に秀でた者が進学してくる為、授業として習っている。
「でもファーストダンスは皇子殿下と私のダンスでしょ?気が重いの。」
クリスタの国では、皇室主催であったり格式の高い舞踏会の時に、参加者の中で1番身分の高い者がそのパートナーと共に最初のダンス……ファーストダンスを踊らなければならない。
今回の学校行事で1番身分が高いのは皇子であるアルトゥールだ。
必然的にアルトゥールとアルトゥールのパートナーであるクリスタが、そのファーストダンスを踊らなければならない事になっていた。
「家でも練習してるんでしょ?」
確かにカーラの言うように家でもダンスの練習をしてはいる。
しばらくの間、マシューもクリスタの練習に付き合う為に寮には戻らず練習に付き合ってくれているのたが、どうも動きがぎこちない。
「でも自信がないの。」
クリスタは確かに下手ではない。
しかし、上手でもないのだ。
少しでも上達したいと思い父と母に手本にダンスを見せてもらったのだが、両親の滑らかで優雅な足さばきに甘やかな色香の溢れる雰囲気に圧倒されてしまったのだ。
どうしたら両親のように踊れるのかを頭の中でごちゃごちゃ考えてしまうようになってしまったクリスタのダンスは、まるで油のきれた機械仕掛けの人形のようにぎこちなかったり、ラジオ体操のように色香とはかけ離れたダンスになってしまっている。
そんな事クリスタのダンス事情などアルトゥールは知らないだろう。
だから尚更気が重いのだった。




