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「殿下の婚約者ですか〜。きっと美しい方が選ばれるんでしょうね。」
ニコニコと笑顔でアルトゥールの未来の婚約者を思い浮かべるヴァレリーは、騎士見習いにしてはおっとりとした雰囲気の少年である。
5年後の彼は多少凛々しくなっていたが、少し?かなり?ぼーっとしていた。
「オレの婚約者だからな。」
腕を組んでふんぞり返りながらもアルトゥールはクリスタをチラチラと見ている。
アルトゥールの婚約者はアルトゥールの両親である皇帝夫婦の意向で、アルトゥールが18歳になるまでは婚約者を選定しないらしい。
もちろん家柄や性格などは考慮されるが、アルトゥールが愛する女性と結婚させてあげたいと皇帝夫婦は望んでいる為、ある程度意志のはっきりする年齢まで成長するのを待っていると言う話だ。
「この中で婚約者がいるのはスクウェア嬢だけですね。」
ヴァレリーが言うようにカーラには2歳年上の婚約者がいる。母親同士が仲が良く、自分の子供が異性であれば結婚させようと約束しているらしい。
「ええ、良縁に恵まれまして。ありがたいですわ。」
カーラの幼馴染でクリスタも一度あった事があるが、穏やかで優しい好青年だ。
カーラが18歳になると同時に高等部在学中に結婚する事が生まれる前から決まっていた。
クリスタの世界は詩織の暮らしていた世界よりも結婚する平均年齢が20歳前後と低く、貴族だとカーラのように生まれる前や幼い内に婚約し結婚する夫婦が多い。
カーラとその婚約者は年齢差もそれほどなく仲も良い……が、年齢が親子程離れていたり、顔も見た事のない相手が婚約者になる事もあるので、カーラはその点は恵まれてると言える。
「私は御三方がどのような方と婚約者なさるのか、とても楽しみですわ。」
特に皇族のアルトゥールと四大精霊のシルフの洗礼を受けるクリスタの血統はとても特別な血筋で、婚約の申し込みが赤ん坊の時から殺到していると聞く。
クリスタの両親も皇帝夫婦のようにクリスタが愛する人と結ばれる事を願っているため、親が積極的に婚約者を選ぶ事はしていない。
「私は頭が良くて優しいお兄様みたいな男性が良いですわ。」
現在クリスタの好みのタイプは詩織の最推しであったアルトゥールではなく、クリスタの為に女装までしてくれていた兄のマシューだ。
将来美系間違いなしの優しいマシューが側にいては理想が高くなるのは間違いない。
「頭が良くて優しいだな。」
アルトゥールが腕を組んでフッと鼻で笑うとガラッと教室のドアが開いた。
「おはようございます。」
クリスタ達が婚約者について話をしていると、クリスタ達の担任の教師が挨拶をしながらドアから入ってくる。
クリスタ達の担任はスラッとして背の高い40代の男性だ。
「じゃあな。」
担任の男性教諭が入ってきた事でアルトゥールが手を上げて離れ、ヴァレリーが頭を下げて自分の席に座る。
「それではホームルームを始めます。」
クラスメートが全員着席した事を確認した担任はクリスタを見てニコリと微笑んだ。
「ラフォレーゼさんから清涼な風の力を感じます。素敵な力を授かりましたね。」
魔法感知能力が高いと言われる担任に素敵な力と言われ嬉しくなったクリスタもニコリと笑った。




