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落ちてきた子供は瑠璃色に水色のメッシュが入った不思議な髪色の男の子で、気を失っているようだ。
「その子を隠すんだ。」
風に声を乗せたのか、この場にいないはずの祖父の声が聞こえる。
そして祖父の声が聞こえた直後に湖に何か落ちたのか、大きな水柱が立った。
「!」
その祖父の声に1番に反応したマシューは、男の子を抱え上げ、マシュー諸共茂みへと身を投じて男の子の姿を隠す。
そしてすかさずクリスタが風で辺りの葉を巻き上げて、マシューが隠れた茂みを更に覆った。
次の瞬間、パキン!と何かが弾けたような音が聞こえた気がする。
「湖がっ!」
ベンヴェヌードの声に湖を見ると、目を奪われる程美しかった湖がパキパキと音を立てて白く凍りだし、白い冷気が三人を覆う頃には湖が全て凍りついていた。
「大丈夫か?」
クリスタにふわりとかけられたのは父の声と暖かいショール。
豊かな緑も冷気により白く凍りつき、大地さえも霜で白くなっている中、立ち尽くしていたクリスタ達の元に父が空から降りてきたのだった。
「お父様、一体何が?」
「話は帰ってからだ。私は細かな魔力操作は苦手だからな。お前の魔法で子供達全員家まで運べるかい?………あの2人を隠しながらな。」
父がクリスタの耳元で、あの2人を隠しながら……と他には聞こえないように囁いたのだが、それはマシューと先程落ちてきた少年の事だろう。
クリスタの魔力は残り少ないが、家までなら大丈夫だと頷くと、父は頭を撫でてくれた。
「この湖が一望出来るテラスまで飛ぶんだ。私は後ろを追いかけるから。」
「はい。ブルーノ、ベンヴェヌード。こちらへ!」
クリスタはマシュー達が隠れた茂みの前へとブルーノとベンヴェヌードを呼ぶと、風が渦巻くように流れ出した。
「ブロウアップ・トルナード!」
周りの木の葉を大量に巻き上げて目くらましにしてマシューと少年を浮かび上がらせ、その2人の周りをクリスタとブルーノとベンヴェヌードが飛び、子供達は空高く舞い上がっていく。
そしてクリスタ達の後に続いた父が砂や土を巻き上げた暴風と共に浮かび上がった。
目指すは祖父母の屋敷。
初めての空の旅に浮かれるベンヴェヌードを横目に、クリスタは汗を流しながら繊細な魔力操作を行ない、祖父母の屋敷に向かうのだった。




