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祖父の屋敷に戻ると、やはりガドリン兄弟が遊びに来ていた。
「レディ・クリスタ、どうかお受け取り下さい。」
片膝を地に付けて跪くブルーノの手には大輪の真っ赤な薔薇。それを差し出されたマシューはどうしたら良いかわからず硬直し、そんなマシューに助け舟を出してあげたいクリスタも兄同様にどうしたら良いかわからずに硬直している。
「マシュー!洗礼終わったんだろ!!なぁなぁ早く遊ぼうぜっ!!兄様も早く!!」
ノシッとブルーノの背中に伸し掛かって遊ぼうと迫るベンヴェヌードを見てマシューとクリスタの硬直が解けた。
「この屋敷の下にある湖が綺麗だから、兄様がマシューの姉様を連れて行きたいって行ってたんだ!オレ達も行こうぜ!!」
祖父の屋敷の裏は盆地になっていて、そこには神秘的なエメラルドグリーンの湖があり、クリスタが泊まった部屋のバルコニーから眺める事が出来る。
今朝バルコニーから眺めた時に見た湖は、朝日が湖面が反射して輝いていた。
屋敷からはトロッコで降りる事が出来る聞いていたので、祖父の屋敷に滞在している間に一度は行ってみたいと思っているのだが、兄のマシューはあまり行きたくはないようだ。
「マシューは行きたいのね?」
しかし、行ってみたいと思うクリスタの気持ちがわかっているのか、マシューは肩を竦めた。
「私はもう少し動きやすい服装に着替えて参りますから、マシューも荷物を作りなさい。おばあさま、ブルーノ様からいただいた薔薇を飾って下さいますか?」
ブルーノの薔薇はマシューが受け取る事なく祖母の手へと渡り、マシューはそのまま部屋を出て行った。
「用意してくるから、ここで待ってて。」
大きめのカバンに水筒とタオルと……と、持って行く物を頭の中に思い浮かべていく。
部屋に戻ると、目に付いたリュックサックにまずタオルを祖父母が用意してくれたと思われる男物の薄手の上着を入れる。パウンドケーキがテーブルにあったので、それを包んでリュックサックに入れた。
「開けても良い?ボタバッグ持って来たよ。」
コンコンっとノックの音と共にマシューの声が聞こえた。
「お入り下さい。」
マシューが入って来たのはマシューの部屋と繋がる扉ではなく廊下側からだ。
マシューの手にあるボタバッグと言うのは革で出来た袋状の水筒の事で、軽くてたくさんの飲料水が入る。
「ブルーノとベンヴェヌードが首を長くして待ってる。そろそろ行こうか。
」
そう話すマシューの表情は浮かない。
女装姿で男からの熱い視線を浴びるのは心底嫌だろうが、マシューはそれでもクリスタが心配で付いて来てくれる優しい兄だ。
「お兄様、大好きです。」
クリスタは大好きなマシューの腕にギュッと抱き付くと、優しい兄ににっこりと笑顔をむけた。




