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帰り道の道中、洗礼でシルフが現れた事や創造神から贈り物と加護をもらった事については、ここにいない母と祖母以外の人には他言しないようにしようと馬車の中で決めた。
理由は勿論クリスタの身の安全の為だ。
ガドリン夫人のように銀の美しい髪色を血筋に望む者や、強い力を欲する人間は後を絶たないだろう。
正面から嫁に欲しいと言うならば(父親的にはよろしくないが)まだ良し。まだ幼いクリスタを誘拐して連れ去ろうと言う者がいないとは限らない。
だからこそクリスタの指にはサイズの大きかった守護の指輪は、祖父の屋敷に戻ったら特殊金属で出来た鎖に通して首からかけて持ち歩くと言う事になった。
「疲れてない?」
そう優しく声をかけてくれたマシューは、祖父の屋敷でガドリン兄弟が待っているだろうからと、女装した状態である。
マシューの女装姿は変声期直前の男子とは思えないほどの美少女振りで、『オレ攻め』のゲームの中でマシューの女装姿が出てきていたらエフェクトがキラキラしているんだろうなと、クリスタは思った。
「大丈夫です。」
馬車での移動疲れと緊張疲れはあるものの、それよりも洗礼が終わったと言う事は魔法が使えるようになっているはず!早く試したい!と言うウキウキとした気持ちからか、疲れをあまり感じてはいない。
むしろ女装をしているマシューの方が疲れているように見える。
癒やしてあげたい。
マシューの女装はクリスタの為なのだから、せめてマシューの疲労を取り除いてあげたい。
クリスタの中のもうかなり薄れてしまった詩織の記憶に、身体を癒やすクリスタの魔法がないかを探すと……あった。
「リラックス・ヴァン。」
この魔法はクリスタが使える回復魔法の中でも下位の物だ。
身体に負った傷ではなく体力だけを回復させる魔法で、ミントの爽やかな香りの風が優しくマシューを包み込み疲労を取り除いていく。
「すごく気持ち良い。」
うっとりとした表情でクリスタの魔法に身を任せたマシューは、疲労が取り除かれるとクリスタに向けてにっこり笑った。
「ありがとう、クリスタ。こんなに気持ち良い魔法は初めてだ。」
マシューの美少女な笑顔が眩しい。
お兄様ではなく本当にお姉様だったら、マシューはきっと母そっくりの美女に成長しただろう。
「クリスタは私やブライトと違って魔法の才があるようだな。」
この世界に存在する対魔物以外にはほとんど魔法を使った事がないらしく、マシューとクリスタは2人の魔法をほとんど見た事がない。
祖父と父はどちらかと言うと脳筋。
二人共風の主・風の大公・風の騎士など、風の乙女シルフに因んだ通り名がいくつもあるが、細かな魔力の調整が苦手な2人は魔法ではなく剣技で魔物を倒している。
たまに魔法を使っても、全力で魔物を吹き飛ばす力技らしい。
そう言えばゲームでのマシューも、穏やかな物腰とは裏腹に戦闘では魔法より剣技だったり、魔法でも肉体強化の魔法の方が得意だった気がする。
魔法の才能豊かな母親に似て良かったとクリスタは思った。




