怒涛の冬のイベントラッシュ(5)
愛斗くんに言われて来たと木の下で待っていた冥加くんに告げれば、彼は呆れたように笑った。
「女癖は悪いけど、金森愛斗は悪い奴じゃないのに。ぼくなんかのほうに来るとか、もったいない」
冥加くんに言われるまでもなく、愛斗くんが良い人なのは知っている。
ぷうっと頬を膨らませて拗ねてみせる。
「似合ってないよ、可愛くない、あざとい」
冥加くんの指が膨らませた頬を潰す。
「来ちゃったものは仕方ないかな。ほら、いこっか。手水舎で清めて参拝しよう」
先を歩き出す冥加くん。
「待って!」
私は慌てて追いかけた。
「やり方がわからないので、教えてください」
手水舎で作法が分からず困惑する。
いつも適当に手を洗っていたから、いざ真面目にやるとなると出来ない。
恥を忍んで冥加くんに頼めば、彼はぼくも自信ないけどと付け足す。
「先に右手から洗って」
言われるがまま、冥加くんの見よう見まねで動く。
柄杓を片手に水をすくい上げ、右手を清める。
「次は左」
柄杓を持ち変えて、左も同じように。
「今度はそのまま水を掬って、左手に受け皿を作って、口をすすいで。うん、そう」
これで終わりかなと柄杓を水盤に戻そうとすれば、冥加くんに止められる。
「待って、待って。最後に柄杓を清めなきゃ」
「そうなの?」
「そうなんだよ。ほら、真似して」
「うん」
もう一度左手を清めて、水を残したまま柄杓を上むきに持ちあげる。
水が柄に沿って流れ落ちる。
「はい、終わり。じゃ、列に並んで詣でようか」
「はーい」
長蛇の列に並んで、ようやく自分たちの番になる。
拝殿前に進み出て、軽くお辞儀をする。
財布から5円を取り出そうとし、無いことに気づいた。
「10円しかない…」
あとはお札。
ここは奮発するしかないか。正月だしと迷っていると、隣で立っていた冥加くんが自分の財布からもう一枚5円玉を取り出し、私の手に握らせてくれる。
「あげるよ」
「え、でも」
「ぼくの五円玉だからね。願いも叶いやすくなるんじゃない?」
「……ありがとう」
人から貰ったお金で意味があるのかな?と思いつつも、冥加くんからの厚意を素直に受け取る。
御賽銭箱に五円玉を投げ入れる。そうして鈴を鳴らし、二礼二拍一礼。
最後の一礼の際に願い事を強く心に念じた。
(冥加くんの彼女になれますように!)
私の願いはそれだけ。
でも隣の冥加くんは何をそんなに願っているのやら、妙に長々と祈りを捧げていた。
私は後ろの人からのプレッシャーに耐え切れず、拝殿前から退いて、列の脇から冥加くんが戻って来るのを待った。
「ごめん、少し長くお願いごとし過ぎた」
「べつに、へーき」
申し訳無さそうな顔をする冥加くんに大丈夫だよと微笑みかけ、そのままふたり並んでおみくじを買いに行った。
「小吉か。微妙だね…」
「私も小吉。絶対大吉だと思ってたんだけど」
ふたりして、微妙なおみくじの結果に立ち尽くす。
とりあえずおみくじの売り場の木に結んだ。
背の高い冥加くんはあんまり人が結んでない位置に結んでいて、羨ましく思いながら見つめていると。
「ほら、貸して。ひかりりゃん」
「…!」
言いたいことがあるなら言わなきゃと言って、冥加くんは彼が結んだ隣に私のものも結び付けてくれた。嬉しい。
小腹が空いたとのことで、屋台に食べ物を買いに来た。
私は大判焼き。冥加くんはたこ焼き。
「半分こしよう!」
「ぼくはひかりちゃんの分も買ってきたよ」
「…どうしたの、優しい」
「ぼくはいつも優しいよね」
神社の端で、冥加くんが買ってくれたたこ焼きを食べる。熱い。ソースが美味しい。
冥加くんがたこ焼きを片手に持ってくれたので、歩きながらふたりでつまんで食べた。餡子の甘さと、生地のほんのりとした甘さがたまらない。
でも少し胸焼け。たこ焼きの辛さで中和。
「記念に写真でも撮る?」
「どうしたの、冥加くん」
「……ひかりちゃんはぼくのことなんだと思ってるのかな」
普通のデートみたい。手とかは繋がないけど。
でも、冥加くんが至れり尽くせりで怖い。
けれど写真を撮るのはやぶさかではないので、私は素直に冥加くんの隣に立った。
少し近づく。
神社の鳥居を背景に、冥加くんがスマホをインカメモードにする。
「はい、笑って」
「にー」
ぱしゃ。
冥加くんとの幸せな思い出となった。
▼ 金森 愛斗 の 攻略情報 が 開示 されました。




