番外編:【はじめてのキャンプの話を聞くはずだったのに……】
今日のタブレットの画面の向こうは、三陸にいるおじいちゃんとおばあちゃん。東京にいる僕とお母さんを合わせた4人で、画面越しに話をしている。
「この間、お父さんと話していたときにお母さんから聞いたんだけど、昔住んでいた団地の近くに米軍の弾薬庫があって、子どもの頃にそこで初めてキャンプをしたんだって。おじいちゃんとおばあちゃんも、その弾薬庫に行ったことあるの?」
僕がそう尋ねると、おじいちゃんは「俺は行ったことないなぁ。近くを車でよく通ってはいたけど」と首をかしげ、おばあちゃんも「私も行ったことは一度もないわ。噂には聞いていたけれどね」と答えた。
すると、お母さんが話を割って入ってきた。
「そういえば、友達の家が座間キャン(キャンプ座間)の近くにあったから、独立記念日の花火大会には何回か行ったことがあるわよ。基地の中はまるでカリフォルニア州みたいで、日本なのに、住所もカリフォルニア州って知って初めて行ったときは本当にびっくりしちゃった!」
「お母さんも基地の中に入れたんだ?」
「そうなの。独立記念日の花火の時は一般開放されて入れるのよ。ものすごい人出で、駅からずっと長蛇の列だったわ。今みたいにICカードなんて便利なものはないから、帰りの切符売り場で並ばずに済むように、友達のアイデアで事前に往復切符を買っておいたの。友達の経験と知恵ね」
「すごい気合だね……」
「もうね、中は日本じゃなくて本当にアメリカって感じで、空気の匂いまで違うのよ。屋台も基地の人がハンバーガーやホットドッグを売っていて、そこが私にとっての『チリドック』との出会いだったわ。すごく外国の味がしたのを覚えているなぁ」
「お母さんって、外国の香りがするところになると、妙にフットワークが軽いよね」
僕がからかうと、お母さんは「悪かったわね!」と笑う。
「いくら当時の円高で海外レジャーブームとは言っても、仕事があったりして海外旅行なんて簡単に行けなかったからさ。せめて雰囲気だけでも味わいたかったのよ」
「そういえばお母さん、昔から『危ないから変なところに行っちゃダメ』って言うくせに、自分の若い頃は……」
僕がツッコミを入れると、おじいちゃんとおばあちゃんも「本当にそうだよ」と笑いながら頷いた。
「まあまあ、それはそれとして!」とお母さんは話を強引に進める。
「花火は本当にすごい迫力だったのよ。広い芝生にシートを持っていって、みんなで寝転がりながら見上げるの。ただ、真上に上がるから火の粉がパラパラと落ちてきて、『服に穴が空かないかな』って少しヒヤヒヤしたけれどね。そういえば一緒に行った友達のひとりが、『買い出しに行ってくる!』って意気込んで長蛇の列に並んじゃって、結局花火が始まっても戻ってこられなくて、寝転がって見れなかったなんてこともあったっけ……」
すっかり花火の思い出話で盛り上がってしまい、肝心の「子どもの頃のキャンプの話」はすっかりどこかへ消えてしまった。
僕が本当に聞きたかったのはキャンプだったんだけどなぁ……。まあ、面白い話が聞けたからいっか。
お母さんの面白すぎる過去の思い出は、今日も僕のタイムカプセルにどんどん溜まっていく。




