番外編:【お母さんの青春はディスコのステップ?】
「お母さんはディスコってところに行ったことがあるの?」
さらに気まずい空気をごまかすように、僕は聞いてみた。
お母さんは少し思い出すように考え込み、ぽつりと言った。
「六本木の有名なところには行ったことがなかったけれど……証券会社の社員旅行で金沢に行ったときのことね。当時、六本木にあった有名なお店と同じ名前のお店が金沢にもあって、みんなで『行ってみよう』って話になったの」
「えーっ、ディスコって踊るところだよね? それがチェーン店みたいに他の県にもあったんだ」
「そうなのよ。でも、お母さんたちもよく分からなくて。とにかく社員旅行のノリだったから、みんなジーパンにTシャツやシャツ……っていうラフな格好だったの。宴会のあとに勢いで行っちゃったんだけど、いざ入ってみたらすごく恥ずかしくて!」
「どうして?」
「その場所は、真剣な社交の場だったみたいでね。周りはおしゃれをしてきた人たちばかりで、私たちの格好は完全に浮いていたのよ。それに、何より踊りが独特で。お母さんが知っている新宿や渋谷のディスコとは違って、みんなが一斉に同じ振り付けで踊っていたの」
「えっ、お母さんも踊れたんだ!」
僕が驚くと、お母さんは少し苦笑いしながら答えた。
「お母さんの盆踊りの話、覚えているでしょう? あんなに激しい踊りなんて……」
「そうなんだ。じゃあ、お母さんは渋谷や新宿のディスコには行ったことあったんだね」
「そうね。そこならまだハードルが低かったから。結局お母さんは踊らなかったけれど、社会科見学気分でね。当時は学生でもやたらと合コンが流行っていた時期だったから、友達に付き合って顔を出したりしていたのよ」
「お母さんにも、そんな青春時代があったんだね」
「……どういう意味かしら?」
またまた、やってしまった。つい口が滑る。
でも、お母さんのバブル時代と、その少し前の活気ある時代の話を聞くのは案外楽しい。
僕のタイムカプセルが、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、お父さんの家族によってどんどん彩られ、活気づいてゆくのを感じた。




