番外編:【昭和の時代の少女の夏休みの過ごし方】
「お母さん、そういえばお母さんたちって小学生の時、どうやって夏休みを過ごしてたの?」
出かけた先のお昼ご飯、ファミレスのテーブルで僕はふとお母さんに質問した。
「そうねぇ、私たちの時は、学校で必ずほぼ毎日のようにプールがあったわね」
懐かしそうに目を細めるお母さん。
「学年別とかで午前中の時間が決まっていて、真面目にプールの練習をさせられるのよ。でも、自由な時間もあってね」
「へぇー、楽しそう」
「そう。その自由時間に、みんなで一定方向にプールを歩くのね。円を描いて。そうすると、水が渦を巻いて流れるプールになるの。あれは面白かったわね。今でもみんなで流れに身をまかせて浮かんでいた記憶があるわ」
「わー、そんなことしてたんだ」
「そういえば、当時は水泳帽に『級章』って言って、泳げる級が色分けされた細いリボンみたいなのを縫い付けなきゃいけなくてね。一目でこの人が泳げるか泳げないかっていうのがわかっちゃうから、ちょっと嫌だったわねぇ」
「ふーん、厳しいかったんだね。じゃあ、夏休みはプールに行っただけだったの?」
「今みたいにエアコンがないから、家の中にばかりいるのも暑くてね。私たちが住んでいた団地は、建物の影が結構できるから、そこでみんなで涼んでおしゃべりしたりしてたわよ」
「えー、そんなもんなんだ」
「あとは、『漫画図書館』っていうのが近くの駅のところにできて、バスに乗って行かなきゃいけなかったんだけど……。でも、本当にたくさんの漫画が置いてあって、借りるにはお金がかかるんだけど、その場で読むにはお金がかからなくてね。小学生が狭いところにごろごろいたわ。みんな漫画を読みふけっていたものよ」
「えー、そんなのあったんだ。今無料でスマホアプリで結構読めるもの多いよね」
「はあ〜、本当に便利な世の中ね。でも、その『漫画図書館』って別に公的な施設がやってるわけじゃなくて、いつも決まった女性が椅子にただ座っていただけの私的なものだったのね。今考えると不思議な場所だわ」
「面白い人がいるもんだね」
「でも、今は立川の方に『マンガパーク』があるわよね。確か」
「ちょっとここからは遠いけど、面白そうだね。今度行ってみようかな」
「ふふ、大人でも一日遊びに行くには楽しいかもね。お母さんも行ってみたいな」
「お母さんも漫画好きなの?」
「お母さん漫画大好きよ。小学校とか中学校とか、すごい漫画づくしだったもん」
「びっくり。お母さんにも、そんな少女の時代があったんだね」
「今の発言は、女性には気をつけたほうがいいわよ」
お母さんが深い深い微笑みをした……。
夏なのに、なぜか寒気がしたのは気のせいではないと、僕は思う。
家族のタイムカプセルは、まだまだ満タンにならないようです。




