番外編:【父として……】
今日は、三陸のおじいちゃんとおばあちゃんの家から、子供が東京の家に帰ってくる日だ。私はワクワクして待っていた。三陸にいる時もタブレット越しに話せないわけじゃない。だが、やはり妻の父親と母親も画面の向こうに子供と一緒にいると思うと、いつもの東京にいる時と違って気軽に話すことができない。やっと子供と久しぶりに心から話せると思った。まだかまだかと待ってると、やっと子供から着信が来た。スイッチを押す。
私は子供に「おかえり。疲れただろう。無事に帰って来れてよかった。」と声をかけた。
子供は「おじいちゃんとおばあちゃんの家から帰ってくると、お父さんの異国の地からより時間がかかる気がする…」と言う。
「そうだよなぁ。1日がかりだもんなぁ…。」
「でも今年の夏もすごく楽しかったんだ。おじいちゃんとおばあちゃんといっぱいしゃべれたし、いろいろ昔の話とかも聞けたし、地元の話も聞けたんだよ。それに友達達ともいっぱい遊べてすごい楽しかったよ。」
あまりにも楽しそうにするので、父親としてはちょっと情けないが嫉妬してしまった。つい子供に向かって「そういえば、夏休みにここに遊びに来て帰るときに、空港でお父さん一生懸命手振ったのに、振り向いてくれなくてすごく寂しかったんだぞ」と言ってしまう。
すると、子供がちょっと寂しそうに「お父さん、ぼくの気持ち全然わかってないね。振り向いたら余計寂しくなると思ったし、泣き出すと思ったから振り向けなかったんだよ…それにお父さんが余計寂しくなるかもしれないと思ったから…」と言われてしまい、やってしまったと思った。自分の気持ちを押し付けてしまって、子供の気持ちを全然考えていなかった。
私は慌てて「ごめん…お父さん寂しすぎて言っちゃいけないこと言ったなぁ…ほんとごめん」と謝ると、子供がきょろきょろした。そして、
「お父さん今お母さん近くにいないから言うけど、お父さんそっちで大変な思いして疲れて日本に帰ってくるのはわかるけど、帰ってきたら少しお母さん手伝ってあげなよ。お母さんいつも1人で僕のことや仕事したり家のこともやってるんだよ。お父さんはそっちで会社の仲間もいて、みんな親切にしてくれてたじゃん。僕たちとこうやって画面越しにはしゃべれるんだから寂しいかもしれないけど…帰ってきた時ぐらいお母さんを少し休ませてあげない?僕も手伝うからさぁ、今度帰ってきたら少しお母さん楽にさせてあげようよ」
と言われてしまって、私はショックで言葉が出なかった。でも子供の手前、
「そうだな。いつもお父さん帰ると何にもしないからなあ。好きなことして、こっちじゃできないことを日本に帰って全部しなきゃと思って…」
「お父さんほんとにそっちで大変なのはわかるけどね。でもここはお父さんの家でもあるんだからさぁ」
と諭されてしまった。子供は去年から本当に逞ましく成長してしまった。とても良いことなんだが、私がそばにいないのに成長しているっていうのも少し寂しい気がする。そういうところがダメなんだなぁと反省した。
「今度帰った時、お母さんをたくさん手伝ってあげようなぁ」
と言って電話を切った。異国の地のシーンとした部屋で、余計に孤独が身に染みた夜だった。
家族の話はまだまだ続きます




