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夏のタイムカプセル ―僕と魔法のハムの夏―  作者: Fos B


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番外編:【ちょっと未来を話し合おう〜心配しているのはみんな一緒〜】

明日には東京に帰るという夜、魔法のタブレットを通じて、東京にいるお母さんと、三陸にいるおじいちゃん・おばあちゃん、そして僕の4人で話をしていた。

「お母さん、明日には帰るからね。毎日タブレットで話してるけど、帰ったらもっといっぱい話そうね」

僕がそう言うと、お母さんは嬉しそうに微笑んだ。

「毎日顔を見て話していたとはいえ、やっぱり寂しかったからね。お母さんも……明日は、あなたの好きなものをご馳走…といかないけれど、いっぱい作って待ってるわね。仕事があるから、明日は東京駅まで迎えに行けなくてごめんね…」

そのやり取りを聞きながら、おじいちゃんは少しもぞもぞと落ち着かない様子で、手元のビールを一気に飲み干した。そして、新しい缶を開けてビールを注ぐと、今度は一口ゆっくりと味わうように飲んだ。あえて何も言わないおじいちゃんを見て、おばあちゃんが口を開いた。

「おじいちゃんったら、あなたが明日帰るのが寂しくて、仕方ないのよ」

おじいちゃんは何とも言えない複雑な顔をしていたが、それでも何も言わずにビールをまた一口飲んだ。

僕が話題を変えようと切り出した。

「そういえばさっき、バーベキューの時に近所の人たちが『おじいちゃん達、このままこっちに根を下ろしてくれそうで安心だ』って言ってたよ」

僕がそう言うと、おばあちゃんは少し複雑そうな顔で笑い、おじいちゃんはビールを置いて静かに語り始めた。

「そうだな……。あの大震災の時は、東京に住んでいたおじいちゃんたちも、宮城にいるひいおばあちゃんのことが心配で心配でたまらなかった。ひいばあちゃんが一人でここにいるのは忍びないって、二人でこっちに戻ってきたんだ。ここはおじいちゃんの故郷じゃないけれど、第二の故郷だと思ってる」

おばあちゃんが、しみじみと続けた。

「でもねぇ、最近は二人して足腰も弱くなってきて……。ここは坂道も多いし、買い物や病院に通うのだって一苦労なのよ。車の運転も、いつまでできるか分からないし」

するとおじいちゃんが、少し語気を強めて言った。

「おい、まだ大丈夫だ! 近くの街までなら、病院だって買い物だって、俺の愛車があるからこうやって自分でできてる。マニュアルのクラッチを踏む力は、まだ誰にも負けないぞ」

お母さんがタブレットの向こうで苦笑いする。

「お父さん、そういう問題じゃないのよ。もうかなりの歳になっているんだから、いつ何があるか分からないんだから。買い物だって、万が一、峠道で事故でも起こしたら、誰にも気づいてもらえないかもしれないのよ。心配かけないで」

おじいちゃんは少しむすっとした様子で、黙ってビールをあおった。おばあちゃんは「ほんとにおじいちゃんのことを心配してるのよ。みんな」と言った。お母さんもタブレットの向こうで、心配そうに頷いた。

「そうよね……。タブレットでこうやって毎晩顔を見ながら話せるようになったけれど、やっぱり離れているのは心配よ。お父さんもお母さんも、もう若くないんだから。東京の近くなら、何かあった時に私もすぐに駆けつけられるし、買い物だって便利でしょ?」

おじいちゃんは、天井の電気を見つめながら呟いた。

「そうだな……。本当は、このままこの地で最期まで過ごせれば一番いいんだがな。それがこの土地への恩返しだとも思うし……。でも、現実問題として、娘たちに迷惑をかけるわけにもいかないしな」

おばあちゃんが優しくおじいちゃんの背中に手を置いた。

「おじいちゃん、まだ今すぐ決まったわけじゃないんだから。でもね、東京に戻ることも、そろそろ真剣に考えないといけない時期に来ているのかもね。私達がいなくなったら、この家はどうなるか分からないんだけど……」

少し重い空気になった茶の間。でも、僕は明るく言った。

「そっか。でも、もしおじいちゃん達が東京に戻ってきたら、僕ももっと頻繁に会いに行けるよ! 今度は僕が、横浜や東京の美味しいお寿司屋さんや、いろんなレストランを案内してあげるからね」

おじいちゃんとおばあちゃんは顔を見合わせて、ふっと笑った。

「ははは、そりゃ楽しみだ。じゃあ、その時は東京のうまいもんを案内してもらわないとな」

お母さんがタブレット越しに笑った。

「もう、最後はいい話でまとまったわね。それじゃあ、明日早いんだから、東京に帰る準備は終わってるの? 早く寝なさいね。また冬休みにも、おじいちゃんとおばあちゃんの家に来るか、あるいは二人とも大丈夫そうなら東京で会うか、ゆっくり考えましょう」

「うん、絶対だよ。それじゃあ、お母さん、また明日、東京でね。気をつけて帰るね!」

そう言って、僕は魔法の箱のスイッチを切った。窓の外は静かだったけれど、おじいちゃん達の心の中にある複雑な思いと、これからの未来の相談が少し見えたような、そんな夜だった。


まだまだ話は続きます


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