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風を切るマニュアル車と、団地のあの子

縁側でのおしゃべりは、まだまだ続く。

「団地でもね、あなたのお母さんはすごいやんちゃだったのよ」

おばあちゃんが笑いながら教えてくれた。男の子たちに混ざって「ケイドロ」で駆け回り、戦隊ものごっこをすれば、みんながピンクを選ぶ中で一人だけ黒レンジャーを志願して、男の子たちを怖がらせたりしていたそうだ。

「女の子同士で遊ぶ時も、小さい頃の怪我が嘘みたいに活発でね。ゴム跳びや長縄跳びを夢中でやっていたわ」

僕には聞いたこともない遊びばかりで、何が何やらわからない。戸惑っていると、今度はおじいちゃんが口を開いた。

「この田舎に遊びに来る時は、いつも私が車を運転してきたんだよ。当時はマニュアル車しかなかったからね」

東北道を降りてここまでの道は、当時はまだ整備されていない山道で、「タヌキに化かされるぞ」なんて噂話もよくしたものだ。

「今の高速道路みたいに洒落たサービスエリアなんてなかったからね。出かける前にはおばあちゃんがおにぎりを握って、お茶をたくさん水筒に詰めて。ウェットティッシュなんてない時代だから、おしぼりをたくさん絞って持ってきたものだよ」

おじいちゃんが懐かしそうに言うと、おばあちゃんがすかさず笑う。

「そうそう。おにぎりが冷たくなっちゃっていまいちだったのよね。でも、ドライブインで売っていた自動販売機のおうどんやホットサンドは、少し高かったけれど妙に美味しかったわ」

「いやいや、おばあちゃんのおにぎりも美味しかったよ」

おじいちゃんがフォローするのを聞いて、僕は思わず尋ねた。

「おじいちゃん、ずっとシフトを操作してて疲れなかったの?」

「昔の車はみんなそうだったよ。でもね、あれこそが車を操っているという実感がして楽しかったんだ。だから、今もマニュアル車に乗っているんだよ」

おじいちゃんはそう言って目を細めた。

「それにね、当時は車にエアコンなんてなかったから、窓を全開にして走ったものさ。空いている道は最高だったけど、渋滞すると地獄だったね。みんな車にうちわを持ち込んで、必死に扇いでいたよ」

車にエアコンがないなんて、今の僕には絶対に無理だ。

後から聞いてさらに驚いたのは、車だけじゃなく、家にもエアコンなんて普通はなかったということ。

……みんな、あの暑い夏をどうやって乗り切っていたんだろう。

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