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プールは二層式洗濯機?

スマホの充電切れという事実に衝撃を受けているうちに、おばあちゃんがお昼の呼び出しに来た。食事中もぼーっとしていたけれど、食べ終えて再びおじいちゃん、おばあちゃんと縁側に座った。

「五右衛門風呂、覚えられて楽しかった?」

おばあちゃんは、茹でたてのトウモロコシとスイカ、そしていつもの甘い麦茶を用意してくれていた。僕は麦茶をひと口飲んで、小さく頷いた。

「品川に住んでいた頃はお風呂がなくて、銭湯に通っていたのよ」

おばあちゃんは懐かしそうに話し始めた。

「ある時、銭湯がお休みの日にお母さんが汗だくで帰ってきてね。お風呂に入れなくて困っていたら、ひらめいちゃったの」

当時は二層式の洗濯機が主流で、洗う槽と絞る槽が分かれていたそうだ。洗う方に水を溜め、ヤカンで沸かしたお湯を足して温度を調整し、即席のお風呂を作ったのだという。

「そしたらお母さん、『プールだ!』って大喜びでね。狭い洗濯槽の中でバシャバシャと水を跳ね返して、泳いでいる気になっていたわ」

洗濯機をお風呂代わりにするなんて! 毎日銭湯通いというだけでも驚きなのに、おばあちゃんの知恵にはまたしても衝撃を受けてしまった。僕の頭は、少し追いつかない。

僕が固まっていると、おじいちゃんが話に加わった。

「あの頃は団地ブームでね。抽選に30回も挑戦して、やっと当たって品川から引っ越すことになったんだ」

負けじとおばあちゃんも口を開く。

「そうそう。引っ越しの前日に、私が姐やをしていた姉弟が黒塗りの運転手付きの車で会いに来てくれたのよ」

ずっと会いたかったけれど、遠慮して疎遠になっていたお屋敷の奥様たち。本当は気に掛けてくれていたのだと知り、おばあちゃんの目はとても優しくなっていた。

引っ越し当日、おじいちゃんはトラックの助手席へ。おばあちゃんは電車とバスを乗り継いで新しい団地へと向かった。

その道中、多摩川を渡る陸橋でバスが渋滞に巻き込まれた時のことだ。ふと外を見ると、川面を大量の泡の塊が流れていくのが見えたそうだ。

「今は鮭や鮎が戻ってくるほど綺麗な川だけど、昔はとても汚れていたのよ」

かつての多摩川の姿。僕の知らない世界が同じ日本にあったなんて、信じられないような気持ちになった。おじいちゃんたちの生きてきた時代は、僕にとって驚きの連続だ。


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