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夏のタイムカプセル ―僕と魔法のハムの夏―  作者: Fos B


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番外編:【世代をつなぐ掃除の知恵】

イチゴのペンダントの話を聞いた次の日。またいつものように、タブレットの向こう側に東京のお母さん、三陸の茶の間にはおじいちゃんと、おばあちゃんと僕が座って話そうとしていた。

 画面越しのお母さんは、また少し疲れた顔をしている。僕が「お母さん、どうしたの?」と聞くと、お母さんは話し始めた。

「今日ね、会社帰りにシート式の使い捨てワイパーのシートがなくなったから、ホームセンターに寄ったの。床用ハンディタイプ、どのシートにしようか選んでいたら、ちょうど近所の年配の女性が通り掛かってね。捕まっちゃったのよ」

 その人は「最近の若い人は…」から始まり、「私たちの時代はね」と続く、ちょっと厄介なタイプらしい。

「『私たちの時は冷たい水で雑巾を洗ったのに、今の人たちは…』って言われてね。昔は掃除機なんてなかったから、箒で、いちいち濡らした新聞紙を畳の上に撒いてきれいにしてたのよ、なんて言われちゃったわ。いつ終わるのかなぁと立話に疲れ始めたときに、ちょうど他の近所の人に話しかけられて、急いでハンディタイプのシートを買って、『では失礼します』って何とか逃げてきたの」

 それを聞いて、昔は新聞紙を濡らして箒で掃いていたことにびっくりして、おばあちゃんの方を見た。

「そうよ。それに雑巾掛けも大変だったわ。障子の桟だって、ちゃんと物差しに雑巾を挟んで隅々まできれいにしたのよ。今みたいに便利なものが全然なかったから、掃除機もないし、本当に一苦労だったのよ」と、おばあちゃんは懐かしそうに笑った。

 お母さんは、ここぞとばかりに話題を変えるように僕たちに聞いた。

「そういえば、あなたたちの学校では今、どんな掃除をしているの? 私たちの時は、『自在箒』って言ったかしら? まっすぐな棒の先にブラシのようなブラシ毛がついている、あのスタイリッシュな定番の掃除道具。それで掃いていた記憶があるわ。あと、雑巾を固く絞って、床を端から端まで競争したわね。思わず足が引っかかって頭から転んだり、膝を擦りむいたりして痛かったこともあったけれど…」

 僕は今の学校の様子を伝えた。

「今も、お母さんの時と同じ『自在箒』も使っているよ。柄が180度パタパタ動いて細かいホコリをキャッチするのは、お母さんたちの時と変わんないんだね。でも最近は、化学モップとか使ってるところもあるって聞いたよ。その方が便利でいいなと思うんだけどなぁ」

 すると、お母さんは言った。

「化学モップはお母さんの時もあったわね。でも1回2回使うとすぐ埃が溜まっちゃって、かえって埃の塊が落ちたりして汚れたような気がしたわ」

 そこで、おばあちゃんがニュースの話をした。

「日本の掃除が海外の人から『責任感や公共心を育てる素晴らしい教育だ』って、ニュースでやってたわよね」

「そうそう、海外の教育者の間でも注目されているらしいわね」とお母さん。

 さらに話題は変わった。

「私たちの時は、学期末や夏休み前になると自分たちでワックスを塗らされたの。すごく臭くて嫌な匂いがしたけれど、あなたたちは今どうなの?」とお母さんに聞かれ、僕は答えた。

「僕たちは今、水性のワックスを塗るからそんなに臭くないんだよ。ベタベタもしないし」

「それはよかったわ。あれはかなり強烈だったから」とお母さんはホッとしていた。

 その流れで、おじいちゃんが口を開いた。

「そういえば、メジャーリーガーの二刀流のあの彼も、ベンチのひまわりの種をきちんと紙コップに入れて、グラウンドに落ちてるゴミまでポケットに拾ったりと、すごくきれいにしてて日本の誇りだよね」

 僕も続いた。

「サッカーの日本代表の人たちだって、ちゃんとベンチをきれいにしてから帰るし、日本も野球の選手も、ベンチをすごくきれいにしてるもんね。日本人ってきれい好きなんだね」

 年代が違っても、みんなそれぞれの掃除の仕方できれいにしているんだなあと、僕は思った。

 そんな話をしていたら、お母さんの顔の疲れも取れてきたようだ。

 画面の中のお母さんに向かって僕は言った。

「もうすぐ夏休み終わるから、お母さんもうちょっと待っててね。家に帰ったら少し頑張ってお手伝いしてみるよ」

 お母さんは、とても嬉しそうに微笑んでいた。


まだまだ家族の話は続きます。


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