↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏のタイムカプセル ―僕と魔法のハムの夏―  作者: Fos B


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/104

番外編:【それぞれのバタークリームケーキ】

すき焼きやマグロの話で記憶が刺激されたのか、お母さんがおじいちゃんに問いかけた。

「お父さん、そういえば昔、クリスマスにはケーキを食べるっていうスタイルが定着し始めた頃、忘年会の景品でクリスマスケーキを持って帰ってきたことがあったよね」

「そんなことあったっけか?」

 おじいちゃんがとぼけると、おばあちゃんが笑って言った。

「あったわよ。あなたは『ケーキじゃなくてウイスキーが当たればよかったのに』って愚痴を言ってたじゃない」

 おじいちゃんは「そうだったか?」と目を泳がせている。

 お母さんが苦笑いしながら続けた。

「今みたいにショートケーキがいつでも食べられる時代じゃなかったから、お父さんが箱を持ってきたときは嬉しくてたまらなかったの。でも、開けてみたらバタークリームのケーキでね……すごくがっかりしたのを覚えてるわ」

「バタークリームのケーキ?」

 僕が聞き返すと、おばあちゃんが教えてくれた。

「昔は生クリームなんてなくて、バターを練ったクリームだったのよ。もったりしていて、すごく味が濃くて重いの。好き嫌いがはっきり分かれる味ね」

「僕も食べてみたいな」と僕が言うと、お母さんは「今のさっぱりしたケーキに慣れていたら、多分一口で参っちゃうと思うわよ」と笑った。

 すると、おばあちゃんが少し遠い目をした。

「私たちの時代は甘味なんて貴重で、クリームだって高級品だったから、バタークリームでも懐かしい味よ。それにおばあちゃんの子供の頃は、学校で『脱脂粉乳』っていう栄養の塊みたいなものを飲まされていたの。今の牛乳とは全然違って、独特の匂いがしてとても美味しくなかったけれど、お腹がいっぱいになるし、栄養があるからとみんなで我慢して飲んだものよ」

 お母さんは「……そうよね。食べ物に好き嫌いを言えるなんて、本当は贅沢なことなのね」としみじみと言った。

 好き嫌いが多い僕には、その言葉が少し胸に刺さった。お茶請けのチョコレートを頬張りながら、今の幸せをかみしめた。

 僕たち家族の夏は、まだまだ続いていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。