番外編:【魔法の箱と渦潮のナゾ】
三陸の茶の間では、おじいちゃんとおばあちゃんと僕が、テレビに映る徳島の渦潮の映像を眺めていた。
「すごいねぇ、水がぐるぐると……」と感心するおばあちゃん。
ふと、僕は疑問に思った。
「ねえ、おじいちゃん。テレビで見たんだけど、北半球と南半球で渦の巻き方が違うって本当なの? 徳島のこの渦は、どっち向きに巻いてるんだろう?」
おじいちゃんは首をかしげ、「さぁ、考えたこともなかったな。右かなぁ、左かなぁ」と苦笑い。おばあちゃんも「昔はそんなこと、学校でも習わなかったわねぇ」と困ったように笑った。
「おじいちゃんやおばあちゃん世代にとって、渦巻きや自然現象は『勉強する対象』というよりも、生活の中で目にする『不思議な現象』や『自然の営み』だったから、わざわざ学校では教わらなかったと思うよ。徳島の渦潮に右巻きと左巻きがあるなんて、専門的なことまで疑問にすら思わなかったな」と、おじいちゃんも頷く。
そこで僕は、手元の端末を取り出した。
「ちょっと調べてみるね」
検索窓に「渦潮 巻き方」と打ち込み、数秒待つ。すぐに答えが表示された。
「あ、分かった! 北半球は反時計回りで、南半球は時計回りなんだって。でも、鳴門の渦潮は地球の自転とは関係なくて、本流と支流の速さの違いで、右巻きも左巻きも両方できるみたいだよ!」
僕が読み上げた説明に、二人は目を丸くした。
「まあ、そんなことがすぐ分かるのか! 昔だったら図書館に行って、分厚い辞書をめくって……どの本に載っているか探すのさえ一苦労だ。それこそ一日がかりだっただろうになぁ」
「本当にすごいわね。この小さな魔法の箱の中に、世界中の知恵が入ってるみたいだわ」
おばあちゃんは魔法でも見たかのように僕の端末を覗き込み、おじいちゃんは「今の時代、ネットってやつは本当に便利だな」としみじみ言った。
「昔は『知らない』ことが当たり前で、それが『不思議』で終わっていたけれど、今は『知ろう』とすればすぐに出会えるのね」
おばあちゃんがそう呟いたあと、少し真剣な顔で続けた。
「でもその分、本当か嘘か自分で見極めなきゃいけないんだね。ネットには間違ったことも結構あるって聞いたわ。便利なんだか不便なんだか、難しい時代だねぇ」
茶の間に流れる、少し不思議で、とても温かな時間。
ネットという新しい風が、昔ながらのこの茶の間にも、新しい知識の種を運んできてくれたような気がした。




