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番外編:【お盆の迎え火と精霊棚】

僕はおじいちゃんと並んで座り、縁側で精霊馬を作っている。

「おじいちゃん、こんな感じ?」と聞くと、おじいちゃんが「そうそう、いい具合だ。ご先祖様も喜んでくれるよ」と答える。きゅうりと茄子に、爪楊枝を刺して足に見立てる最中だ。このきゅうりの馬は、あちらの世界から早く帰ってきてほしいから、足を速くするためにきゅうりで作るのだと教わった。

茄子は足の遅い牛に見立てている。お盆の間にたくさんのお供え物を積んで、あの世へ帰る時はのんびりと景色を楽しみながら帰ってほしいという、優しい願いが込められているらしい。

静かな三陸の昼下がり、時折聞こえるセミの声と、野菜を切る音だけが響く。

8月13日の夕方

おじいちゃんとおばあちゃんと僕の3人で、玄関前で迎え火を焚いた。

「ご先祖様の霊が迷わず家に帰ってこられるように、目印として焚くんだ。これがオガラだ。昔から、この麻の茎を焚いて、ご先祖様の帰る目印にしたんだよ」とおじいちゃんが教えてくれる。

「昔はみんな地面で焚いてたけど、今は安全のためにこの缶を使うのよ」とおばあちゃんが準備したのは、東京から持ってきたという年季の入ったおせんべいの空き缶だった。

僕は少し驚いた。神聖な儀式に、お菓子が入っていた缶なんて不釣り合いな気がしたからだ。でも、おじいちゃんは優しく続けた。

「どんな道具でもいいんだ。大切なのは、ご先祖様を想う気持ちなんだからな。あの空き缶も、お盆の間はご先祖様のための大切な火の器なんだ」

「あれ? 火を跨ぐんじゃないんだっけ?」と僕が聞くと、「送り火の時に跨ぐのよ」とおばあちゃんが教えてくれた。

「送り火は8月16日の夕方、お盆の期間中に一緒に過ごしたご先祖様の霊を、再びあの世へお送りするために焚くの。霊が迷わず帰れるよう、火をしっかり見送るのよ。火を跨ぐと、また一年、元気に過ごせると言われているの」

お盆の期間中、昼間に3人で用意した精霊棚(盆棚)には、精霊馬、おばあちゃんが育てた夏野菜や果物、水、そしてほおずきを飾った。ほおずきの赤い色は提灯の代わりになると言われ、精霊棚を飾る定番なのだそうだ。

白団子を供え、最後にひいおじいちゃんが好きだったお酒と、ひいおばあちゃんが好きだった甘いものも添えた。精霊馬(馬と牛)は、家の中に向かって頭を向けるように置く。ご先祖様が家に帰ってくることを表すためだ。

僕は全てが初めての経験だった。都会では見られない煙の匂いと火の熱さ。ご先祖様と家族の歴史を、静かに受け止めた気がした。


家族の話はまだまだ続く


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